謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

【今夜は会える?】

【うーん、ちょっと微妙。仕事が押すかも……でもできるだけ頑張ってみる】
【無理しなくていいから。仕事優先して】
【ありがとう。また連絡するね】

【キョウ! 定時くらいに多分終われそう!】

【わかった。翠の会社の最寄り駅にしようか待ち合わせ。その方が、翠も楽だろ】
【ありがとう。じゃあ、新宿駅の東口に19時でいい?】
【いいよ】

【ごめん、キョウ! ギリギリで記事が差し替えになっちゃって。少し遅れるかも。先にご飯食べててくれる?】
【わかった】

【ごめん! もう少し遅れそう! 8時過ぎるかも】
【了解】


1時間前に受け取った最後のメッセージに視線を落として、あたしはため息をついた。

場所は、まだ社内。
クライアントからの最終OKが出なくて、待機中なのだ。

先週ドタキャンしちゃったから、今夜こそはと思ってたのに。
また、会えないかもしれないな。

無理なら無理って、早めに伝えた方がいいよね。
いつまでも待たせたら申し訳ないし……けど、もしかしたら、もう少し待てば……

マック(パソコン)画面のデジタル時計に目をやり、ジリジリしながら周囲を見渡すが、他のメンバーは音楽を聴いたりスマホゲームをしたりとそれぞれマイペースに過ごしている。慣れたものだ。

こんなに焦ってるのはあたし一人だと気づいて、なんとなく気まずくなり、深呼吸しながら椅子の背もたれへ体重を乗せる。

あぁやだやだ。
ちょっと落ち着こう。

別に、あたしはキョウの彼女ってわけじゃないんだし。
あたしが無理なら、別の女の子が彼の相手をするだけのことで。

そうよ、あたしが行けなくたって、大したことじゃない。
そうでしょ?

落ち着け落ち着けと心の中で繰り返して、あたしは唇をきつく結んだ。

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