謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
ホッとしつつ駅前の広場に駆け込んで――たちまち口から、「うわ」と声が漏れた。
週末の夜、しかも新宿。
当然テーマパーク並みのすごい混みようなわけで。
とても人1人を探し出すどころじゃない。
しまったな……もっと具体的に場所を決めておけばよかった。
あの目立つ容姿だから、たぶんすぐ見つかるだろうと甘く考えてたのが失敗だった。これだけの人に加えて、照明で照らされてるとはいえ昼間とは様子が違うし。
2歩、3歩、と人込みの中をうろついてから、早々にこれは無理だと白旗を上げ、直接連絡を入れようとカバンに手を突っ込む。
「スマホ、スマホ、っと……」
一生懸命かき回すが、なかなかあの感触にたどり着かない。
あぁもう、どこに入れたんだっけ?
え、入れたよね? まさか会社に忘れたとか、ないよねっ?
動揺しながら探す一方で、頭のどこかで、もう無理かもよ、と声がする。
もう帰ってしまったかもしれない。
最後にラインやりとりしてから、どれだけ経ったと思ってるの?
セレブな彼は、待たされることになんか慣れてないわよ。
カバンを探っていた手が、徐々に勢いを削がれていく。
周囲の浮かれたざわめきが、恋人たちの甘い会話が、耳を虚しく掠めていく。
もしかしたら、もう彼は今頃どこかで他の誰かとあんな風に……
「…………」
そうだよね。
わざわざ一人の女のために何時間も待つなんて、そんな無駄なこと、彼はしないか。
「みーつけた」