謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

だからあたしはただ視線を伏せるようにして、黙って頷こうとした、のに。


ぐぐぅっ……


「「……」」

2人してとっさに黙り込む。

ぼぼぼっと顔から火が噴き出る音が聞こえる気がした。
あたしのお腹だ、なんで鳴るのよこんな時にぃいいっ!

「……まさか、何も食べてないとか?」

目を丸くして見下ろす彼から顔を背けつつ、「えぇと、……うん、まぁ、時間がなくて、あはははっ」と曖昧に笑う。
は、恥ずかしすぎるっ。

真っ赤になって羞恥に悶えるあたしを慰めるためか、ぽんぽんと頭の上に手が乗った。

「じゃ、食事だけでもどっか行くか」
「や、ででも、悪いよ。帰ってから何か食べるしっ。なんならコンビニで買ってもいいし」

「いや、実はオレもまだ食べてないんだ」

「え、えぇっ?」
食べてって、言っておいたのに。

咎めるような視線になってしまったせいか、決まり悪げに肩をすくめるキョウ。

「別に、食べずに済ませるとか、オレにとっちゃ珍しいことじゃないんだよ」

「お腹空くでしょ?」

「んー……でもなんか、めんどくさくて。翠もそうだろ? 締め切り前はカフェインとチョコバーで乗り切るって言ってたじゃん」

「それでも一応食べるわよ」
「ドヤ顔するな」
コツンと額を小突かれて、苦笑い。

「じゃあ、食事だけこの近くでってことでいい? お店、どこにしよっか」
「そうだなぁ、この時間だとファストフード系とか」

あとはファミレスくらいかな、と周囲を見回したあたしたちの視界に入ったのは、ラーメン店の暖簾。
とにかく早く食べよう、と無言のままに意見は一致していたから、早々に行先は決まってしまった。

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