謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「んーんまいっ!」
「あー染みるっ」
カウンター席に横並びに座ったあたしたちは、それから10分も経たないうちにずるずる音を立ててラーメンを堪能していた。
まだ夏というほど暑くなく、夜は肌寒いくらいだったのが奏功して、ラーメンはぴったりの選択だったようだ。
「チャーシューぷるっぷる! 口で溶けるっ」
「スープもあっさりしてて絶品だな」
狭苦しい年季の入った店内で、食券を買って、とか。
連れ込んじゃってから、もしかしたらキョウってこういうお店初めて? ミシュラン系じゃないけど大丈夫だった? って若干不安も過ったのに――割と馴染んでるっぽいな。
勢いよく満足そうに食べ進めるキョウを横目に、ふふ、と頬が緩む。
やっぱりお腹すいてたのよね。
よかったよかった。
とあたしも麺をすすっていたら、ふと隣から視線を感じた。
「ん? 何?」
視線を合わせれば、キョウがくす、と口角を上げる。
「いや、やっぱり誰かと一緒に食べるのって楽しいもんだなと思って」
「えぇ? 何それ、いつも一人で食べてる、みたいないい方ね」
何気なく笑い飛ばそうとしたあたしは――ふと、口を噤む。
微かに揺れた彼の眼差しが、気になったから。
なんだか、寂しそうな……?
こちらの探るような視線に気づいたのか、瞬き1回でその表情は消え。
代わって、うんざりした口ぶりが答えた。
「翠だって、『フェラガモのなんちゃらが素敵なの』とか『ルブタンの新作って最高』とか、食事のたびに匂わされてみろよ。一人で食べた方がいい、って気になるから」