謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「ごめん、当たった?」
「うううんっ! 平気」

姿が見えず、動きが予測できないせいだろうか。
なんだかセックス以上に、指の動きがリアルに、エロく感じちゃってっ……いやいや、落ち着きなさい。ティーンエイジャーじゃあるまいし。

煩悩退散!

「もっと力抜いてリラックスして。こっちもたれていいから」

そ、そうよ。
リラックスリラックス。

「翠の髪って、細くてサラサラで、キレイだよな。ウルフカット、っていうのか?この髪型もカッコいいよな」

リラックスリラックス、とつぶやきながら、柔らかなテノールに身を委ねるように耳を傾ける。

「そうかな? 男性はロングヘアの方が好きなんじゃないの?」

「人それぞれだろ。オレは好きだよ、短い髪も。クールで凛として、しなやかで。翠によく似合ってる」

オレは好きだよ。オレは好きだよ。オレは好き……
エコーがかった台詞が頭の中へ響く。
髪型の話だとわかってはいても、へら、と口元が緩むのを止められない。

肩から力が抜け、素直に身体が彼の方へと傾いていくのがわかった。


ぶぉおおおお……

近づきすぎないように調節してくれるドライヤーの、穏やかな音と、風。
彼の繊細な指使い。

それらはまるで極上のエステのようで……急速に眠気が襲ってきて、瞼が下りてくる。

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