謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「眠かったら寝ていいぞ?」
「ううん、大丈、夫。残業なんて、いつもの、ことだし……」

「そんないっぱいいっぱいになっても、それでも頑張るんだな」

「だって、好きで選んだ……仕事、だから」

「好き、か。すごいな、翠は。羨ましいよ、そんなに熱中できるものがあって。オレには何もないからな」

「なんでそんな……こと、言うの? そんなの、いつからだって……見つけ、られるわよ」

ダメだ。
彼を引き留めたのはあたしなのに。

あたしが寝ちゃったら……あぁでも、ほんとに気持ちいい。

「オレみたいな、クズニートでも?」

「ふふ、キョウはクズじゃないでしょ。あたしを、助けてくれたじゃない。優しくて、強くて、だから……クズなんかじゃ、なくて……」


ダメだ、……ダメ、なのに。

あぁごめんなさい。
ちょっとだけ。ちょっとだけなら……いい、かな……?


「……ふ。やっぱり相当疲れてたんだな。サカらなくて正解」


夢うつつに、笑いを含んだ声を聞く。


ふわりと身体が浮き、ゆりかごのような優しい揺れの後、背中が柔らかな感触を捕らえる。
ここは……ベッド?

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