謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「……はぁ色気ヤバ。これは、マズいな……」
ぼんやりと靄のかかった頭では、理解が追い付かない。
何を、言ってるの?
瞼が重くて、開けられない。
「ったく、このオレに我慢させるなんて、翠くらいだぞ? だから――これくらいは、許せよな」
首筋に柔らかな感触が触れ、直後、チリッと微かな痛みが走る。
「ん……」
「……お休み、翠」
声が、気配が、遠のいていく。
思考が曖昧になって、脳みそが溶けていくような感覚――
いつの間にか、あたしは深く深く寝入っていた。
◇◇◇◇
翌朝、ベッドの上で目を覚ますと案の定、と言うべきか、部屋にキョウの姿はなかった。
代わりにテーブルへ、見覚えのある美麗な字で書かれたメモが置かれていた。
『鍵借りた。郵便受けに入れておくから』って、それだけ。
メモを握り締めてその場にうずくまり、はぁっとため息をつく。
ワガママ言って無理やり引き止めたあげく、結局髪を乾かしてもらっただけとか、何やってんのあたし……。
強烈な後悔、罪悪感、胸の中に渦巻くモヤモヤとしたものをじっと噛みしめていたあたしは、やがてその奥にある見知らぬ何かに気づいて、戸惑った。
胸が締め付けられるように切なく、なのにどこか、甘く……
この感情は――……