謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「そういえば、その後妹さんから連絡はきたの?」
デザートまで完食し、お店を出たところで聞かれたあたしは、ため息交じりに首を振った。
「1か月くらい前かな、『迷惑かけてごめん』ってもう一度メッセージが来たけど、それだけ。こっちから毎日送ってるラインには、割とすぐに既読つくんだけどね」
「そっか、心配だね。キョウさんは居場所、知ってるんだっけ」
「うん。そういう調べものが得意な知り合いがいるらしくて、探してくれて。詳しい場所については、まだ教えてもらってないんだけど」
「調べものが得意な知り合い、ねぇ……」
大通りを目指して歩き出しながら、彼女は難しいカオをする。
「彼、何者なんだろうね。何かヒントはないの?」
「さぁ。ほんとに謎だらけなの。会うのは外ばっかりで、家には一度も呼んでくれたことなくて、どこらへんに住んでるのか大体の場所すら教えてくれないし」
「三千万も、親か祖父母がポンと払ってくれる、ってことは、代々続いてるような資産家、って感じかな。IT長者系の成金じゃなくて」
「そうね」とあたしはすぐに同意する。
「確かに立ち居振る舞いっていうか、いろいろ育ちの良さを感じるし、あたしにお財布出させたこともないし。生まれた時からお金に苦労はしたことなさそう」
カジュアルに見せつつ実は、っていうさりげないハイブランドコーデだけじゃない。ミシュランレストランでも違和感なく溶け込むあの品の良さ、洗練されたカトラリーさばき。あれは本物だ。
頑張ってる感が透けて見えた優とは、決定的に違う。
この前はタブレットで日経読んでいる所を見たし、政治や経済、国際関係まで、どんな話題でも打てば響くように反応してくれるし。
かなり教養があるな、ってことはめちゃくちゃ感じる。
一方で、ゲームや推し活っぽいことに熱中してるシーンは、見たことない。
他のセフレや恋人と会ってる気配も……まぁ、そこは上手く隠してるんだろうけど。
最近、大勢の女の子を食い散らかしてるクズ男っていうイメージが、キョウになかなか重ならなくて、戸惑うことが多いんだ。
もしかしたらクズニートを自称したり実家のお金について吹聴してるのは、自分のイメージをわざと貶めようとしてるからなんじゃないか、って思うくらいで――
あたしがそれを説明すると、奈央は「どうしてそんなことする必要があるの?」っていまいち納得できない表情。
まぁ、言ってるあたしも全然自信はないのだけど。