謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「今日もこれから会うんでしょ?」
「あー……うん。実はそうなの」
なぜバレた?
服、そんなに気合入ってるわけじゃないよね?
白スカートだけどタイトめだし、そこまで甘いデザインじゃないでしょ?
「気持ちが走り出しちゃう前に、本人にいろいろ聞いて探ってみたら? ……わたしはもう遅いって方に賭けるけど」
「えっ何? 最後の方聞こえなかった」
「んーん、なんでもない」
「え、ちょっと気になるじゃない」
「なんでもないってー」
「ちょっと奈央……って、あれ?」
通りすがりのビル1階店舗の看板がふと目に留まり、あたしは足を止めた。
シンプルな飾り文字のロゴデザインに見覚えがあるような気がしたのだ。
……あ、やっぱり!
「トワズだ! そういえば新店舗がこの辺りにオープンしたってネット記事に出てたっけ。ちょっと中入ってみてもいい?」
思いがけない出会いにテンションを上げつつ提案すると、奈央は驚いたようにこっちを見て、「大丈夫なの?」と聞いてきた。
「思い出のブランドじゃない。白井さんとの」
思い出のブランドかぁ。
うーん、微妙に違うんだな、あたしは苦笑して肩をすくめる。
「トワズは優と付き合うより前から好きなブランドなの。あのネックレスだって、優がプレゼントしてくれなくても自分で買ってたと思うし。だから、また別のアイテム欲しいなって思って。今度は手放さなくていいように、ちゃんと自分のお金で買うつもり」
「え、手放すって、あれ売っちゃったの?」
「違う違う。それがね、優に慰謝料代わりに返せって言われてさ――」
何それケチな男ねぇ、そうでしょー、etc.……おしゃべりしながら、あたしたちはガラスドアの中へ入って行った。