謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

それから、そのまま徒歩で有楽町に移動。
キョウからの連絡によると、このあたりで買い物と食事をする予定のようだ。

デパートをぶらついてウィンドーショッピングしたりして時間をつぶし、待ち合わせ場所へ向かったのだけど、それでもちょっと早く着きすぎちゃったみたい。

どこかで座って待つことにして、ほど近い場所に見つけたカフェへ。

土曜の夕方だからかな、広いお店なのにかなりの混雑具合だ。
ただ幸い窓際のテーブルのお客がちょうど帰るところだったため、入れ違いに腰を落ち着けることができた。

【今日ね、有楽町のデパート行ったらアニメイベントやってたよ】

オーダーを済ませたあたしがさっそくスマホで打ち込み始めたのは、もはや毎日のルーティーンと化している藍へのラインメッセージ。

【あたしは全然わかんないんだけど、ちょうど人気の声優さんたちのトークショーがあったみたいで、すごい人だった。藍の好きな人は入ってるかな?】

続けて、アニメキャラの等身大パネルの写真を送信。
それから、会場の写真もいくつか……どれを送ろう。

アイドル並みのすごい熱狂だったなぁ、と写真をスクロールして見返していた、ら――ん?

あれ、このピンク色の髪の子……ちょっと藍に似てない?

……いや、まさかね。

ピンク色の髪なんて、今や珍しくもないわよ。特にオタク界隈では。
こっちの子なんてオレンジだし。

だって、今藍は東京にいないはず。
キョウがそう言って……言ってたよね?

でも……なんか、このリュックも見覚えがあるような……

「…………」

なんとなく気になったあたしは、しばらくじっとその写真に見入っていた。

と、そこへ。

「あら、翠さん?」

「え?」

空耳かと何気なく顔を上げるや否や、げ、と自然に小さな声が漏れた。
高価そうなクリーム色の着物に身を包んだ厚化粧の中年女性が、すぐ傍に立ってあたしを見下ろしていたから。


「お、お義母さん……」

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