謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
って、呼んでいいのかしら。
もう義母呼ばわりされる筋合いはありません、とか言われるかな?
割といろいろこだわりのある、神経質な人だったけど――
「まぁ、奇遇だこと。こんなところで会うなんて。お元気?」
あれ、意外にもフレンドリー。
「は、はい。おかげさまで」
狐につままれたような心地で、なんとか笑顔を作った。
さすがにまだ破局を知らない、ってことはないよね?
仲良し親子だったから、たぶん……
「残念だったわ、あなたたちがダメになっちゃったなんて。結婚式楽しみにしてたのに」
あ、ほら、大丈夫だった。
ちゃんと話してた。
「ええと、いろいろありまして……」
「そりゃそうでしょうけど。でもねぇ、知らない仲じゃなし、一言くらい相談してくれてもよかったんじゃない? 私から優に上手く言ってあげることもできたんだし」
「は、はぁ」
いや、そこまで仲いいわけじゃないですよね、あたしたち。
「実は今日、この先の銀座のホテルでお見合いがあってねあの子。あとはお若い二人で、って私は失礼してきたんだけど」
へぇ、優、お見合いしたんだ。
まぁスペックは悪くないし、相手には困らないよね。
「相手は取引先のお嬢様。将来有望な優にぜひともうちの娘を、ってお願いされちゃってー」
有名国立大卒、読者モデルの経験もある才色兼備の女性で、現在は上場企業にお勤めなの。2人、とってもいい雰囲気だったわ。すぐに意気投合した様子でね。この話がうまくまとまれば将来は支店長の椅子も……etc.
ダラダラと自慢交じりに語られて、こっちは笑顔で「ソウナンデスネー」「ワースゴイデスネー」と聞き流すしかない。
別にどうでもいいです、とか言えないじゃない?
すると何を勘違いしたのか、彼女は「わかるわ」と突然訳知り顔で勢いよく頷き、あたしの向かい側の席に腰を下ろしてしまう。
えぇ?? わかるって、何が?
「そうよね、翠さんは優にゾッコンだったもの。自分と別れてすぐに新しい、しかも自分以上のお相手を見つけるなんて、許せないわよね」
はい?
「優みたいに素晴らしい相手とは、もう二度と巡り合えないって、別れてみて初めてわかったんでしょう。そうよね、失ってからようやく気づくことってあるものね」
はぁああ?
いろいろツッコミどころ満載だが、彼女の口は止まらない。