謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「私は、もちろん主人もね、2人が別れたこと残念に思ってるのよ? あなたたちほんとにお似合いだったものー。そういえば翠さん、ちょっと痩せたんじゃない? 顔色もよくないわ。優と別れたショックのせいね? まぁなんてことでしょうっ」
よよ、と目元をハンカチ――どこから出てきた?――で押さえる白井夫人。
「ねぇ、もし翠さんがどうしても優とヨリを戻したいっていうなら、今からでもあなたの味方、してもいいのよ、私」
な、なんだって?
あっけにとられるあたしへと、内緒話をするように彼女の顔が近づく。
「ここだけの話、お嬢様育ちのお嫁さんより、あなたの方が私は上手くやっていける気がするの。ほら、将来的には同居するじゃない? それを考えるとねぇ」
同居なんてあたしも嫌ですよ!
反論しようかと思いつつも、いやもう関係ないからな、と止めておく。
この人、優から詳細何も聞いてないのかな。
あたしの方から別れたいって言ったんですけど?
「いえ、あたしたちはもう終わってますから」
穏やかに、しかしきっぱり言ったのに、彼女は“わかってるわ”とおざなりに頷いて、バシバシあたしの肩を叩いてくる。イタイ……。
「そうやって自分に言い聞かせて、未練タラタラな気持ちを堪えているのね。でも私の前では我慢しなくていいの。正直に言っていいのよ」
「いえ、正直に申し上げています」
「無理しないでちょうだい。やせ我慢は身体によくないわ」
「いえ、ですから無理なんてしてませんて」
「素直になりなさいっ。あんな優良物件、逃して残念なことしたって思ってるんでしょう?」
えぇえ、圧がすごいんですけど……。
「いえいえ、まさかぁ」
あーもうめんどくさいなぁ――という思いがカオに出てしまったのか、さすがに相手は鼻白み、ムッと眉間に皺を寄せる。
「ちょっと、なんなのその態度。こっちが優しく手を差し伸べてやってるっていうのに!」
うわ、この人のヒステリーが始まると厄介なのよねぇ。
お義父さんもすぐに避難してたっけ。
マズいな、周りが気づき出しちゃった。
地声が大きいのよ、この人昔から。
「お気に障ったなら謝ります。でもあたしは――」
「でもまぁ」
こっちの台詞を遮って、白井夫人はどこか嘲るように目を細めて嗤った。
「あなたに常識がないのは仕方ないかもね、ご両親とも高卒じゃあねぇ」
はぁあ?
ここまでの話に両親関係あったっけ?