謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「妹さんも、前に写真を見せてもらったけど、なぁにあの髪の色! 気が狂ってるとしか思えないわ。今どこで何をしてるのかしら? きっとろくでもない仕事しかしてないんでしょう? どうせそのうち借金でもこしらえて身を持ち崩すんでしょうよ。ちょうどよかったわ。うちに疫病神なんて入れたくないもの」

いろいろ反論できない点があるのは確かだけど。
さすがに赤の他人にここまで家族をバカにされたら、こっちだって腹は立つ。

そしてあたし、言う時は結構ズバッと言っちゃうタイプなんだよね。


「お言葉ですけど、あたしの常識について心配してくださるより前に、ご子息の常識についてご心配されては?」

「は?」

「毎回30分の遅刻は当たり前で謝罪もナシ、デート中もスマホでゲームに熱中。今時家事は女の仕事だと言い張ってこっちに丸投げ。あたしが片づけないと3日で部屋がゴミ屋敷になってましたけど。常識がないのはどちらでしょう? お相手のお嬢様には、結婚前に正体バレないようにした方がいいですよ」

頑張って隠してくださいね、と笑顔で締めくくると、聞こえたらしい周囲からくすくすと笑い声が広がった。

「な、なっ……」

あ、しまった。調子に乗って言い過ぎた。
相手の顔が羞恥と怒りに赤く染まり、額に青筋が浮いているのを見て、慌ててフォローしようと口を開く、が遅かった。


「な、な、なんなのあなたはぁっ!!」


さらに、怒らせたタイミングが絶妙に悪かった。
ちょうどあたしのアイスコーヒーを女性スタッフが運んできてくれたところで、白井夫人の視界に入ってしまった。

彼女がグラスをお盆から引っ掴むのが見え――この後の展開が予想できたあたしは、ひぃいっと顔を背けざまきつく両目を閉じる。

白のスカートなんか穿いてくるんじゃなかった!


パシャッ……

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