謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
5. 超大型新人モデル、爆誕です⁉

「え、奈央たちって、まだシてないのっ!?」

7月に入ったばかりのその日は、どんよりした梅雨空。
こんな蒸し暑い日に(しかも)スーツ姿であるにも関わらず、トワズの広告撮影を手伝わないかと奈央に誘ってもらったあたしはテンション高め。
駅から続く道を、奈央と一緒に張り切って歩いていたのだけど。

まさかの衝撃告白に、持っていたカバンと袋を落としそうになってしまった。

「あはは、翠驚きすぎだよー」

同じくドリンクやお菓子が入った袋を下げて歩く奈央は冗談めかして笑っちゃってるけど、なんとなくその笑顔には影がある。

どうりで恋人と久しぶりに会ったにしては、その後ずっと元気がないなって心配してたのよ。きっと彼氏がまたカナダに戻っちゃったせいだろうって、そっとしておこうって思ってたのに。
まさか、まだ手を出されてなかったなんて。

「ちょっと、ていうかかなり意外。押しまくっちゃいそうなタイプなのに」

何しろ奈央に、初対面で公開告白したくらいのヤツだからな。
とっくに押し倒してると思ってた。

「『触れたら、離れるのが辛くなるから』って。まぁわからなくはないけど。でももしかしたら、カナダ(向こう)にもう新しい相手がいるのかも――」

声がどんどん暗くなっていくから、慌ててしまう。

「ままさかっそんなわけないじゃない。カメちゃんが浮気なんて。心配しなくても大丈夫だよ。それだけ奈央のことが大事ってことでしょ」

「そうかなぁ」
「そうだよっ」

力を込めるあたしへ、奈央がくすっと笑みを向けた。

「ほんと、翠が羨ましいなー。順調そうで」

「じゅ、順っ……え、どこが?」

「だって、昨夜も彼と会ってたんでしょ? 首、キスマークついてるよ」

「え、うそっ」
慌てて指摘された場所を押さえようとするが、両手の荷物に阻まれて断念。彼女の視線から首元を隠すように横を向いた。

「あははっ大丈夫。よっぽどしっかり見なきゃ、単なるアザにしか見えないから」
「う。それ、全然慰めてないっ」

もうっ散々やめてって言ってるのに!
服で隠すのが難しい場所にばっかりつけたがるんだから。

ただでさえこれから夏本番、隠すアイテムに困る季節だっていうのに!

< 76 / 246 >

この作品をシェア

pagetop