謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「おはようございまーす、よろしくお願いしまーす!」
「よろしくお願いしますっ」

挨拶しながら一番手前の第1スタジオへ足を踏み入れて、びっくりした。
奈央の言葉通り、内部は外観のボロさが嘘のよう、広くて近代的な白ホリスタジオだったのだ。

高い天井に設置された黒光りする照明機器をぽかんと口を開けながら見上げて入って行くと、「おや、これはまたレアキャラのご登場だねえ」と聞き覚えのあるのんびりした口調が聞こえた。

「高林さんっご無沙汰してます」

相手を認めて急いでぺこりとお辞儀するあたしへ、部屋の隅で荷物を解いていた中年の男性がニコニコ手を振ってくれた。
ベテランカメラマンの高林さんだ。何度かギリギリの修正やら納品やらでやり取りをしたことがあって、その縁で奈央と一緒に飲みに行ったことがある。

「えーと、あたしは初めましてだよね? 沢木、紹介してよ」

長い足で近づいてきたのは、ベリーショートのアラフォー女性。
タカラジェンヌか、ってくらいの主役オーラを纏ってる。

「あ、はい。彼女は、うちのデザイナーで相馬翠。私の担当する制作物はほぼ彼女が作ってくれてるんです。翠、こちらスタイリストの宮本静(みやもとしずか)さん」

カリスマスタイリストとして、よく雑誌やテレビにも登場してる有名人だ。
やっぱり綺麗だなぁ。

「初めまして、相馬です。今日は大好きなブランドの撮影ってことで、無理言って着いてきちゃいました。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくー。トワズ、好きなんだ?」
「はい、前からずっとファンで! 斬新なのに、年を重ねてもしっくり馴染むデザインが素敵ですよね」
「最近多いよねファンになる子。ドラマとか、タイアップが上手いんだろうなぁ。じゃ、今回も見逃せないよね。新作が出るの、珍しいし」
「そうなんですよ。絶対欲しいと思ってて――」


「それは嬉しいな」

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