謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

スタジオのセッティングが大体終わったところで、中里さんが撮影に使うアイテムを見せてくれた。

「わ、これが新作ですか! 素敵!」

ケースへ並んだそれに、女性陣(あたしたち)は大歓声だ。

ネックレス、リング、ブレスレットがあり、それぞれカップルコーデできるようにメンズ用も揃っている。
ネックレスには幾何学模様をモチーフにしたようなチャーム。不規則にダイヤがあしらわれており、まるで万華鏡の模様のように美しい。

「メンズはチェーンじゃなくてレザー、ってところがポイントだよね。チャームも小さくなってるし。これなら男性でも気軽につけられそう」

奈央の言葉に「確かにね」と頷いて同意する。
レザーアクセなら、キョウにめちゃくちゃ似合うだろうな――と、思わず彼が身に着けているところを妄想してしまってから、いやいや、とすぐに浮かんだそれを打ち消した。

彼女とお揃いとか、そういうのは彼のガラじゃないよ。
恋人(ヅラ)されるの、嫌いだもんね……

ズキッと過った微かな胸の痛みから目を逸らすように、あたしは視線を中里さんへ移した。

「御社がメンズアイテム作るのって、珍しくありません?」

「珍しいどころか初めてですよ。以前から企画だけはあったんですけど、デザイナーがなかなかその気にならなくて。今回ようやく。気まぐれが過ぎるデザイナーで困ってます」

「へぇ、そうなんですね」

トワズのデザイナーかぁ。
こんな素敵な物を生み出せるんだもの、きっと才色兼備の芸術家(アーティスト)なんだろうな。

< 80 / 246 >

この作品をシェア

pagetop