謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「本人も珍しくやる気になってるので、これを機に積極的に展開していこうと、社長の鶴の一声で決まりましてね。その第一弾ということです。相馬さんも、ぜひ彼氏とお揃いで使ってみてください」

「あ、あはは……そうですね、彼氏ができたらぜひ」

返事に困って曖昧に頷くあたしへ、なぜか中里さんが興味津々って感じに「おや」とツッコんで来る。
「もしかしてフリーなんですか、相馬さん。モテそうなのに」

「えぇっ、いえいえ、そんなこと全く!」

彼の角度からキスマークは見えないと思うのに、なぜか気恥ずかしくなって視線を泳がせていたら、奈央が横から「中里さーん、それセクハラ認定されるかもしれない発言ですよー」と助け船を出してくれた。

「えっ、そうですか? そんなつもりは全然……参りましたね、失礼しました相馬さん」
「いえいえっもちろん、わかってますとも!」

お互いぺこぺこお辞儀して、それから顔を見合わせ、一緒にぷぷっと吹き出す。
よかった。人気ブランドの広報だけにちょっと心配してたけど、腰も低い感じでいい人そう。

クライアントの中には、上から目線でいろいろゴネてくるところもあるんだよね。これなら今日の撮影はスムーズに進むかな。

「そういえば、相馬さんはうちの商品を気に入ってくださってるとか。どれが一番お気に召しましたか?」
「ええと……そうですね、全部好きなんですが、特に去年発売された花びらモチーフのペンダントは大好きです」
「あぁ、あれは好評でした。完売後も問い合わせが途切れなくて――」

そんな感じでその後も彼が気さくに話しかけてくれ、和やかなムードで撮影準備が進んでいた。

そこへ。

RRRR……

スマホの着信音。奈央のだったみたい。
「はい」と応答する声が聞こえる。

「あぁ早川さん。道路渋滞とかしてます? みなさんもうお待ちで……え? えぇっ!?」

いきなりスタジオ内に悲壮な叫び声が響き、何事かと全員がギョッと動きを止めた。

< 81 / 246 >

この作品をシェア

pagetop