謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「――というわけで、急遽モデルやってくれる人が必要なの。キョウに頼めないかな?」

「………」

話を結んだ後に続いたのは、沈黙。
ん? 聞こえてる? 寝てないよね?

「とっトワズっていうブランドよ、知ってる? まだ創業して10年未満かな。ドラマや映画とのコラボで認知度が上がってきて、最近は海外セレブにもファンがいるくらい注目されてるブランドなの」

『ふぅん……』

う。めちゃくちゃ興味なさそうだな!

いや、わかってるわよ。
雰囲気はゴージャスなヤツだけど、“えーモデルやれるの、ラッキー、うぇーい!”なんて言う様なパリピじゃないのよね。はいはい。

ここでメゲるなあたし。押せ!

気合を入れ直し、再度どれほど困っているかを畳みかけようとして――『なぁんだ』とつまらなさそうな声に出鼻をくじかれた。

『てっきり今夜も逢いたいってラブコールかと思ったのに、残念』

……は? え?

投げやりな口調はどこか寂しそうにも聞こえ、本当に残念がっているような……って、ううん、バカね。
寝た相手全員に言ってるのよ、どうせ。

真に受けちゃダメ。
あたしなんて……彼と一緒に朝を迎えたこともない、補欠セフレ要員なんだから。

「え、えと、期待に応えられなくて、ごめんね? けどっ、あの、これも一種のラブコールじゃない?」

つっかえつっかえ言い募ると、『あーなるほど?』と相変わらず気乗りしなさそうな返事。ダメ、かなぁ……


『……まぁいいや。いいよ、行っても』

「ほほほんと!?」

『翠の頼みなら、断れないだろ』

とくんっ……

あたしが頼んだ、から?
なんか、そう聞こえたんだけど。

まるで自分が特別だと言われているような錯覚を覚えて、頬が熱くなるのがわかった。

いやいや、落ち着きなさい。
社交辞令って言葉を知らないの?

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