謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「え、っと……ぁありがとうっ。あのね、緊張しなくても全然大丈夫だから。カメラマンもスタイリストも大ベテランだし、言う通り動けば――」

『ただしモデル料、高くつくよ?』

え、モデル、料……えぇえ? そうくる?
あたしの頼みなら聞いてくれるんじゃないわけ?
舞い上がって損した!

足元見てくるなんて、ちょっとひどくない? お金持ちのくせに!
「わ、わかったわよ。なんとか、その……増額できないか、交渉してみる」

不承不承答えると、スマホの向こうから笑い声が聞こえた。

『金なんていらないって。んー翠次第だな。翠がオレの事一晩中(・・・)たっぷり楽しませて(・・・・・)悦ばせて(・・・・)くれるなら、それでチャラにしてやるよ』

はぁ!?

ぜ、前言撤回。全っ然寂しそうじゃない。
エンジン全開でいつも通りだわ。

悪いカオしてニヤついてるキョウが見えるような気がして、スマホをギリギリと握り締める――あーダメダメ、ここは冷静に。背に腹は代えられない、ってやつよ。

「わ、かった。キョウが喜ぶこと、考えてみるね」

『へぇ、それは楽しみ』
「じゃ、交渉成立、ってことでいい?」

『あぁ、スタジオの住所送って。今からシャワー浴びて着替えるから多少時間もらうけど、池袋なら大体40~50分で着けると思う』

「わ、ありがとうっ」

通話を切ってガッツポーズ。
奈央にさっそく報告すべく、スタジオへダッシュした。

< 86 / 246 >

この作品をシェア

pagetop