謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「え、っと……ぁありがとうっ。あのね、緊張しなくても全然大丈夫だから。カメラマンもスタイリストも大ベテランだし、言う通り動けば――」
『ただしモデル料、高くつくよ?』
え、モデル、料……えぇえ? そうくる?
あたしの頼みなら聞いてくれるんじゃないわけ?
舞い上がって損した!
足元見てくるなんて、ちょっとひどくない? お金持ちのくせに!
「わ、わかったわよ。なんとか、その……増額できないか、交渉してみる」
不承不承答えると、スマホの向こうから笑い声が聞こえた。
『金なんていらないって。んー翠次第だな。翠がオレの事一晩中たっぷり楽しませて、悦ばせてくれるなら、それでチャラにしてやるよ』
はぁ!?
ぜ、前言撤回。全っ然寂しそうじゃない。
エンジン全開でいつも通りだわ。
悪いカオしてニヤついてるキョウが見えるような気がして、スマホをギリギリと握り締める――あーダメダメ、ここは冷静に。背に腹は代えられない、ってやつよ。
「わ、かった。キョウが喜ぶこと、考えてみるね」
『へぇ、それは楽しみ』
「じゃ、交渉成立、ってことでいい?」
『あぁ、スタジオの住所送って。今からシャワー浴びて着替えるから多少時間もらうけど、池袋なら大体40~50分で着けると思う』
「わ、ありがとうっ」
通話を切ってガッツポーズ。
奈央にさっそく報告すべく、スタジオへダッシュした。