謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「すぐ警察に相談して、探してもらいます……っ」
最悪の想像が頭を過り、居てもたってもいられず立ち上がりかけ――
「無駄だと思うが」
冷笑する黒沼と視線がぶつかり、ビクッとフリーズした。
「警察は相手にしてくれんだろうよ。ただの家出じゃあな」
「そんな……っ」
焦りと失望が全身を駆け巡る。
けれど――やがて、あたしはゆっくりと浮かせかけた腰を下ろした。
彼の言う通りだという気がしたから。
あのラインのメッセージを見るに、自分の意志で姿を消した、というのは間違いなさそうだし。事件性がなければ警察は動いてくれない、ということくらいは一般人のあたしでも知ってる。
じゃあどうすればいいの?
あたしが探す? でもどこを探せば……
探偵とか、そういう道のプロに頼んだ方がいいんだろうか。
とにかく一刻も早く、無事かどうかだけでも確かめなきゃ。
お父さんやお母さんにだって、なんて言ったらいいのか……
黙ったままぐるぐる考えていると、「で?」と冷ややかな声が思考回路に割り込んできた。
「どう落とし前をつけてくれるつもりかな、お姉さん」
「おとし、まえ?」
意味を掴みかねてパチパチ瞬くあたしを見つめ、黒沼は鼻で笑う。
「こっちはあんたの妹が見つかろうがどうなろうが、どうでもいいんだよ」
「な……っ」
「重要なのは、金を回収できるかどうか。この俺が従業員に金を持ち逃げされて指を咥えて見てた、なんて評判がたっちゃぁ、我慢ならねぇんでね。本人がトンヅラしたんなら、別のヤツに払ってもらうほかないわな」
相手の口調がぐっと荒っぽく、ぞんざいになったことに気づいて、ジワリと汗が滲んだ。
「あたしに……払えってことですか」
「あんたが無理なら両親だな。実家に取り立てに行くしかない。N県だったか?」
「ま、待ってください! それはっ……!」
思わず声を上げてしまい、フロアの視線――目隠しのカーテンはついているが、向こう側からこちらを気にするような声が聞こえたのだ――を集めてしまったことに気づいて、慌てて言葉を飲み込んだ。