謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「お待たせしました。こちらがお話した、キョウです」
彼を紹介すべく、場所を譲る。
直後のみんなの反応は、かなり見ものだった。
奈央も含めて、全員がぽかん。
たっぷり10秒は経ってから、どっと一遍に騒ぎ出した。
「めっちゃイケメン!」
「どっから連れてきたの、こんなイケメン!」
「すごい、かっこい~お兄さん、どこの事務所ですか!?」
「あはは、入ってませんよ」
「え、事務所入ってないの!? もったいない! 紹介するよ!?」
「ありがとうございます。でもオレみたいなド素人、無理だと思いますよ」
「一瞬プロ連れてきたのかと思ったよ~ほんとにモデルやったことないの!?」
「ないです。全く。だからめちゃくちゃ緊張してますよ」
「えー全然見えないよ。身長いくつくらい? 180は越えてるよね?」
「あ、はい。185くらいですかね」
ふぅん、社交的にも振舞えるのね。
女たらしじゃなくて、人タラシだったか。
若干呆れつつ、にこやかに対応するキョウを遠巻きにしていたら、奈央と中里さんがこちらへやって来た。
「翠、彼すごくいいじゃないっ。びっくりしちゃった」
奈央の言葉に頷きながら、やっぱり気になるのは隣の中里さんの反応だ。
「どうでしょう、彼?」
だって周囲の大興奮とは一人異なり、彼だけは全然通常モードなんだもの。
まぁきっとイケメンは自分で見慣れてるから、それほど衝撃でもないのかも?
それよりは広報として彼はアリかナシか、ビジネスライクにチェックしてるんだろうな。
納得する一方で、わずかに不安が過る。
もしかしたら、ブランドイメージに合わないとか、気に入らないとか……?
「いいですね。彼のような方にお願いしたいと思ってた。イメージぴったりです。社長も大喜びするでしょう」
あれ、あっさり高評価。
よくよく見ると、口角が上がってる。
イケメンぷりに驚いてるというよりも、代役が見つかり喜んでいるっていうよりも……なんか、素で楽しそう?
気のせいかな?
「じゃあ……彼で?」
「いきましょう」
「やったぁっ」
「ありがとう翠っ」
あたしと奈央は、手を取り合って喜び合った。