謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「はい、キョウくん視線こっちくれる? いいねいいね、そう、そう!」

パシャッパシャパシャ……


高林さんの声が飛び、ストロボの瞬きとシャッター音が交差する。


結論から言うと、ヒョウタンから駒、っていうか、キョウで大正解だった。

トワズのアイテムが誂えたようにぴたりと似合ったばかりでなく、ほんとに初めてなの? って疑いたくなるくらいプロみたいな表情とポージングで。
女性モデル(マイちゃん)との絡みも完璧。
恋人同士のように、と言われて見つめあう場面なんか、マイちゃんの方が照れちゃったくらい。

フォーマルシーン、カジュアルシーン、くるくると変わる衣装とメイク。
宮本さんも高林さんもノリノリで、自分の仕事に没頭してる。

これはとんでもなく素敵な広告になる。
そんな確信を抱くくらい、全員が撮影に集中していた――あたし以外は。


「はい、じゃちょっと休憩いれましょーか」

高林さんの一言で張り詰めた空気が緩んだ。
一気にスタジオ内はざわつき、人が動き始める。

「いい写真が撮れましたよー。相馬ちゃんほんとにありがとねー」

そんな中ニコニコ顔の高林さんがやってきて、スタジオ隅のテーブルでレイアウトの打ち合わせをしていた中里さんとあたしへカメラを見せてくれた。

背面の液晶画面に映っていたのは、リングをはめた指を絡めて恋人繋ぎするキョウとマイちゃん。

「ほんとに彼、いいよねー。表情に躊躇いがないんだよー僕が何も言う必要ないくらい」
「高さん、あたし彼にモデル事務所紹介しよーかなー。絶対プロでやっていけると思わん?」
「いいねーそれ」

宮本さんもやってきて、高林さんと2人で口々に大絶賛を繰り返す。

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