謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「でもさぁ、彼、どこかで見たことがあるような気もするんだよねえ」
「え、高さんもそう思った? あたしもそんな気がしたの。でも素人なんでしょ?」
「子役とか、やってたことあるのかって聞いても、ないって言うしー」
「どこかで見たっていうか、誰かに似てるのかも?」
「あぁ、それかも! 似たようなイケメン俳優とか、いたっけー?」
あたしの脳裏には、キョウとマイちゃんのツーショットが貼り付いたまま。
周囲の会話はろくに頭に残らず、素通りしていく。
あー……なんだろう、モヤってする。
やだ、ナニコレ。
キョウが上手く撮影を乗り切ってくれて、みんなも喜んでくれて、終わりよければすべて良し、って最高の展開なのに。
どうしてこんなに、あたしだけイライラしてるんだろう。
唇を噛みつつチラリと視線を動かせば、すっかり打ち解けておしゃべりするモデル2人が見える。
「キョウさん、めちゃくちゃ落ち着いてますねー私の初めての撮影とは大違い!」
「そうかな。マイちゃんが上手くリードしてくれるから、助かってるだけだよ」
「えーそんなことないですよー」
「普段はどんな仕事してるの?」
「そうですねーコスメブランドが多いかな。あ、私のインスタ見ますー?」
「うん、ぜひ」
顔を寄せ合って、スマホを覗き込む2人。
美男美女で、なんてお似合いなんだろう。
わかってたことなのに。
彼のモテっぷりなんて。
「さすが、女の子の扱いが上手いわー」
乾いた笑いと共につぶやく一方で、胸の奥に蠢く黒く淀んだ何かに気づいてギュッと拳を握り締める。
狂おしい痛みを伴う、あぁこの感情は……。