謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

ちょうどその時、キョウがふと何かに気づいたように顔を上げた。

バチッと交差する視線――「っ!」
すぐあたしの方から逸らしちゃった。

まともに目を合わせたら、この胸の内を、醜い嫉妬を、悟られてしまう気がして。


「どうしました?」

間近で美声が響きビクッと肩を跳ねさせた後で、ようやく中里さんがこちらを見つめていることに気づいた。

「なんだかさっきから元気ないですね。疲れました?」

集中力を欠いていることを指摘された気がして、居たたまれなくなる。

あーしまった、クライアントに気を遣わせちゃった。
何やってるのよ、あたし……。

「全然平気です。ええと、さっきの続き、いいですか?」

「ええ、もちろん。メインのカットはやっぱりこれでいきたいんですよね。文字は控え目に、全体的に落ち着いたトーンで」
「了解しました。サブカットはこことここに置く感じで、いかがでしょう。キャプションはこっちサイドに流して」
「あぁいいですね」

中里さんと一緒にノートパソコン上の画面をチェックしながら、それでも思考はいつの間にか(キョウ)へと飛んでいく。

コントロール不能なこの気持ちは、もう、決定的だ。
気づきたくなくても、認めたくなくても、もう事実として受け止めるしかない。

これは間違いなく、恋愛感情だと。


あたしはキョウに――恋してる。


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