謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
6. 花火大会でデートです。
【今夜、会える?】
【ごめん、今日はデキない日なの。また今度ね】
【週末はどう?】
【締め切りが重なるから難しいと思う】
【いつならいい?】
【時間ができたらこっちから連絡するから】
【そう言って、もう大分経つよな?】
【ごめんって。いろいろ忙しいのよ】
【言いたくないけど、断れる立場だと思ってる? モデル料だってまだ受け取ってないし】
【それは、、ごめんなさい】
【謝ってほしいわけじゃない。わかってるだろ?】
【わかってるわよ。じゃあ――】
ピンポーン
「はーい、いらっしゃい」
自宅の玄関ドアを開けて出迎えたあたしを見るなり、キョウはハッと瞠目した。
「え、翠、その恰好……」
見慣れないせいか、よほどのインパクトだったらしい。
ぽかんとしたまま、まだ固まってる。
そのカオから、最近のメッセージに垣間見えた苛立ちが消えていることを確認し、先制攻撃が上手く言ったと一安心する。
「どう? 似合う? 今年の新作なんだって」
袖を引っ張って、笑顔でくるりと回って見せる。
モノクロの市松模様にユリをあしらった、大人っぽいレトロなデザインの浴衣。
さすがにもうすぐ30代だし可愛い系からは卒業しようと、今年新調したんだ。
ユーチューブ動画を参考に着つけも頑張って。
髪型も、短いなりにサイドを編み込んで留めてみた。
ふっふっふ。
自分で言うのもなんだけど、なかなかいい感じじゃないかと――
「……っ、あぁ、似合って、る。いいと、思う」
なぜか、らしくもないカタコトで言い、口ごもるキョウ。
え、視線が合わない。もしかして似合ってない!?
がーん……。
と、密かにショックを受けたものの、よく考えれば別に彼に可愛いと思われたくて浴衣を着たわけじゃないし、構わないのよ。うん。