謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
気を取り直して、あたしはキョウの腕を掴む。
「キョウのもあるの。入って入って」
「え、オレの!?」
ビックリする彼を強引に引っ張って、室内へ。
案内した先、あたしの寝室に吊るされたそれ――縞模様が涼し気な、ネイビーの浴衣――を発見したキョウは、言葉もなく目を見開いた。
(市松模様のヤツもあったけど、さすがにそれはペアルックのようだから止めておいた)
「オレ、の……?」
「そうよ。レンタルじゃないの。あたしからキョウへ、プレゼント」
それほど高価なものじゃないし、いつも彼がくれる服やら靴やらを思えば申し訳ないくらいだけどね。
「……オレの、ために?」
「当たり前じゃない。どう? 気に入った?」
「…………」
口元を片手で覆い、立ち尽くすキョウ。
食い入るように浴衣を凝視するその眼差しからは、不快な気配は感じられないけど。
好みに合うかな?
ドキドキしながら見守っていると――
「ふぅん、なるほど」
ふいに、彼の指の間からニヤリと上がる口角が見えた。
……ん? ニヤリ?
「男が女性に服贈る時って、下心があるものだけど」
と、どこか艶めいた視線がこちらを向く。
「は?」
「逆の場合も同じ意味があるってことか? つまり――」
「あぁあありませんっっ! 何もあるわけないでしょ、花火大会に行くだけよっ」
戯言へかぶせるみたいに叫べば、「花火大会?」と面食らった様子。
なぜ驚くの。当たり前でしょ、浴衣といえばお祭りよね?