謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

なんで好きになっちゃったかなぁ。
こんな、無謀な相手。

彼にとって、あたしはただのセフレで。
大勢いるガールフレンドの一人で。

十分わかってはいるのに、恋愛感情を自覚した今、身体だけを求められることに心が拒否感を抱くようになってしまった。

そして、そんな気持ちがいつか彼に知られたら、あんなに忠告したのに結局お前もかって軽蔑されたら、そう考えたら怖くてたまらなくて。

だからあの撮影後、いつも通りお誘いのメッセージは来たけど、用事を見つけては断わってた。いっそ彼が早くあたしに飽きてこの関係が終わってくれたら楽なのに、なんて不純な期待もあったから。

辛くて苦しくて、けど会いたい気持ちもあって……頭の中ぐちゃぐちゃ。

どうしたらいいのかわからないまま時間だけが過ぎ――とうとう“モデル料の支払い”をタテに催促が来て、断り切れなくなってしまった。

そこでせめて妙な展開にならないように、とイベントに誘って先手を打ったわけ。

花火を見た後は人込みで疲れたと言い訳して、そのまま帰宅の予定。

もちろん三千万の借りはまだ返し終わってないし、このままずっと関係を拒み続けるわけにはいかないとは思う。

ただ、今は少しだけ、距離を置きたいんだ。

もうちょっと冷静に対応できるように――って、できる日来るのかしら……。

あーもうダメダメ!
ネガティブになっちゃ。

とにかく先日のモデル料の支払いだけはさっさと済ませてしまおう。
約束したもんね。

「じゃ、着つけしよっか。花火に間に合わなくなっちゃうから」

「あぁ、楽しみだ」

胸に広がるいろんな想いをひた隠し、なんとかいつも通りの口調を心掛けながら、微笑み返すあたしだった。

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