異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

◇12 外国なんて初めてだ

 異世界に来て初めて、国に入国したわけだけど……何もかもがとても新鮮だった。

 何となく、外国に来たような。あ、まぁ、一応外国ではあるけれど。世界は違うが。


「どこか、行きたい所はあるか」

「え?」

「だいぶ久しぶりの陸地なんだろ? ずっと船の上だったんだから、リフレッシュも必要だろ」

「いいの?」

「あぁ、金もたんまりある事だしな。だが約束、絶対一人でどこかに行かない事」

「……子ども扱い」

「子供でも何でも、ここは初めて来た所なんだから気を付けろよ」

「はぁい」


 まぁ、ヴィンスは知らないけれど異世界に来て初めての陸地だし。結構船にいる時から楽しみにしてたんだよね。


「ヴィンスは行きたい所とかある?」

「俺の事はいいから、ナオはどこ行きたい?」


 ……やばい、紳士。紳士様がここにいらっしゃるぞ。こんな人私が一人占めしてるのか。いいのか? まぁうちのクルーではあるんだけどさ。


「……じゃあ、服見たい!」

「おっけ」


 周りを見てみると、いろんな格好の人達が多い。貿易大国って言ってたし、私達が止めた船の周りには沢山の船が止まってる。いろんな国の船が止まっているのかもしれない。

 だから、私達の恰好も別に怪しまれるようなものではない。何となぁく私のイメージでそれっぽいのを見つけてきて、ヴィンスに意見を貰って選んだし。

 でも、同じような格好の人がいないのは確かではある。ちょっと目立っちゃってるかな。いや、何を着ても目立っちゃう人が隣にいるからか。イケメンは罪だ。


「わぁ……」


 服が並ぶお店。なんか色々とあるんですけど。

 まぁこの国は貿易大国らしいからいろんな国の服が集まってるんだろうね。

 レディースは、こっちか。


「ワンピース、多いね」

「そりゃあ、それが普通だからな」

「へぇ」


 長いワンピースに、腰に巻く布がついてる。入る時にも見たけど、男性のにもズボンに紐がついてる。

 なるほど、地球で言うベルトという事か。

 まぁ、最初ヴィンスに服を渡した時どう着るのか聞かれたしね。ゴムも、ボタンも知らなかったみたい。これを見るに、多分ファスナーも知らないかも。

 これで合ってるか? と見せに来た時にはマジで死ぬかと思ったけど。やめて、本当にやめて。腹筋見せないで。

 目の前にあるのは、とっても可愛かったり、大人っぽいものだったりと様々。

 そういえば、私おしゃれとかしてなかったな。こっちに来て。

 こっちに来てからずーっとすっぴん。まぁその後イケメンと一緒に船に乗ってるわけなんだけど、もう最初からすっぴん見られちゃってるしもう遅いかなと思ってそのままいるんだけどさ。

 まぁ、なんかこっちに来てからお肌の調子が良くなってきてるし。だからいいかなぁ、なんて思ってる。もう女として終わってる気もしなくもないけど。

 ……ま、いっか。


「これ、可愛い」

「あぁ、君の姉さん(・・・・・)に似合いそうだ」


 ……あ、そういえば私今男設定だった。そういう趣味の子? だなんて思われたら大変なことになるな。危ない危ない。

 きっとわざとそう言ったのかな、ヴィンスは。


「あ、うん! 姉さん水色好きだし! いいと思う!」


 よし、これでいいか。お店の人にも聞こえたかな。


「ヴィンスは?」

「俺?」

「ヴィンスも買おうよ、折角なんだし」


 はいこっち、とメンズコーナーに背中を押して向かわせた。

 ヴィンスにはずっとお父さんの服ばかり着てもらってたから、好きなの着たいと思うし。

 それにこんなにイケメンなんだから良いの着なきゃ! もったいないよ!

 別に俺は、と言ってくるヴィンスに、これはどうかなあれはどうかなと色々当ててみて。うん、素材がいいと服選ぶの楽しいね。


「どう?」

「ナオはどう思う?」

「カッコいい」

「じゃあこれにする」


 え、いいの? と思っていたけど、本人がそう言うのであればそうしよう。

 お会計はヴィンスがしてくれた。私はお金とかよく分からないし。


 それから、ヴィンスは色々な所に連れてってくれた。と言っても、ヴィンスもここに来るのは初めてなので歩いていて目に入った所に入ってる感じだけど。


「このテーブルクロス、よくない?」

「テーブルクロスか」

「外にあるテーブルに。どう?」

「いいな、生地も綺麗だ」


 なんか、周りに刺繍がされてる感じ。とっても綺麗な刺繍で素敵だ。

 じゃあこれにしよっか、と購入。

 あとはランタンも購入した。とっても素敵な柄のランタンで、アンティークな感じでおしゃれだ。これがあれば、暗い夜に外を出歩ける。月とか星で明るくなっている時ならいいけど、曇っていたりしていると外に出られないし。街灯があるわけでもないしね。

 あ、因みに言うと船の建物の中は普通の電気です。地球と一緒で、天井に取り付けられていて、スイッチを押すととっても明るい電気が付くようになってます。

 お店の中には、羽ペンとインクも売られていた。この世界だとボールペンとかはないらしい。私がヴィンスの目の前でボールペン使ったらびっくりしてたし。

 なんだそれ、って言われたから貸してあげたら楽しそうに文字を書いてた。何本もあったから、そのうちの一本をヴィンスにあげたけど。


「あ、時計」

「それは魔法道具だ」

「え?」

「どこにあっても時間と日付がくるわない魔法道具だ」

「へ、へぇ……」


 実は、ヴィンスが時計を知っているのか分からなかったから家から船に持ってこなかったんだよね。でも時間とかが分からないからちょっと困ってはいた。今何日の何時って分からないとちょっとくるっちゃうよね。

 まぁ腹時計というものもあるけれど。

 じゃあこれも一つ買っちゃおうか、と購入した。

 お金、大丈夫だろうか。そう思っていたけれど、ヴィンスが会計していた時に出した袋にはまだまだコインが入っていたみたいだから安心した。


「腹、減ったか?」

「うん、ちょっと」

「じゃあそこ、入るか」


 そう言って指さしたのは、人で賑わってるお店。カフェ、みたいな感じ。

 中に入ってみると、やっぱり人が多い。と言っても、若い人達が多い。そういう雰囲気のカフェだし。

 とりあえず、空いていた席に二人で座った。


「何がいい?」

「ん~」


 黒板のようなものが壁に吊るしてあって、今日のメニューが書いてある。文字は読めるんだけど、なんかよく分からない食材が書かれてる、のかな?

 でも、サンドウィッチは分かる。だからそれにした。

 何が来るのか、ちょっとワクワクしてた、んだけど……


「……ん?」


 うん、サンドウィッチだ。パンとパンの間に何か挟んである。と言っても、茶色くて硬いパン。中のものは、茶色い。何だろう、ちょっと開いてみたけど見た目……ハムみたいな?

 試しにパクリ、と一口食べてはみたものの……ん?


「どうだ?」

「……」


 目の前のヴィンスにそう聞かれたけれど、私は首を傾げる事しか出来なかった。何の味なのか分からない。食材が違うのかな。ううん、お肉って事は分かる。けど、このソースかな。ソースの味が、よく分からない味の正体なのかも。

 まぁ、美味しいんだけど……物足りない、ような。


「……あの、ヴィンスさんよ」

「ん?」

「食べづらいっす」

「いや、ナオの反応が面白くてな」

(ひど)い!」


 そんなに面白い反応してた? そんなつもりはなかったんだけど。でもずっと見ないでほしいんですけど!

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