異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

◇13 異世界、怖い。

 とりあえずお腹が膨れたから、次は必要な材料を集める事にした。


「とりあえず、常温品から行くか」

「うん、冷蔵食品は後にしよう」


 港の近くだからだろうか、市場はとっても賑わってる。

 さっき船港にとめさせてもらったけど、周りには何(せき)もの船が並んでいて。きっと輸入品とか運んできたのかな。いろんな船があったから、一体どのくらいの国と貿易をしてるのだろう。気になる。

 市場の中に入ってみたけど、中人多くない!? これ迷子になり、そ……


「迷子になるなよ」

「あ、はい……」


 手、繋がれちゃった。え、イケメンとおてて繋いじゃったんですけど。ヤバくない?

 ま、まぁ、とりあえず平常心平常心。

 市場を見渡してみたけど、ヴィンスが前に言っていた通り、私の知っている食材がいくつもある。肉、魚、野菜、果物、他もろもろ。乳製品なんかもある。

 あれ、なんか、お店一つ一つに大きな箱がある。扉付き。……あ、開けた。

 もしかしてあれ、冷蔵庫? あ、魔法道具だからコンセントとか要らない感じ? だから皆お店の隣に置いてるのね。あの中に商品を入れて。へぇ、異世界って面白い。あのお店、乳製品扱ってるみたいだからピッタリだね。

 今回買うものリストには乳製品が多いから、あとで買いに行こう。

 ウチの船には野菜はたくさんあるけど作れないものがたくさんある。この前バター失敗したし。他にも作れないものがたくさんあるはずだから、そこを踏まえて買い物をしよう。

 と言っても、お金には限りがあるからそこも考えないと。……ずっしり入ってるけど。

 でもさ、一応文字は読めるし、数字も分かるんだけど……商品の価格、安くないですか。塩よりはるかに安いんですけど。まぁ、塩は貴重だし量も少し多かったからかもしれないけど。それにしても安い。常識は分からないけど。


「パンのために、粉が必要だな」

「うん、強力粉と、あと薄力粉も買っとこう。あとドライイーストとベーキングパウダーね」


 これはパンとお菓子に使うためのもの。ジャムを大量生産してしまったため、消費するためにその二つを作ろうということになったのだ。

 いつもならスーパーでショッピングカートのかごに入れるんだけど、ここだと、これをくださいと一声かけてお金を渡すと渡してくれるみたい。周りの人達は、買い物かごは編みこみかごに入れてるみたい。


「大丈夫? 重くない?」

「余裕」


 うん、力持ち。ヴィンスがいなかったら私無理だったわ。

 でも、洋服に雑貨に粉にとだいぶ多い荷物になってしまった。それでも平気な顔で普通に持っちゃってるのは本当に凄い。


「一回船戻る?」

「……そ、だな。荷物もあるし……様子も見たい」

「様子?」

「ナオはもうちょっと周りを警戒した方がいいぞ。人を疑うって事を忘れるな」


 ……何となく、分かった気がする。

 そして、船を止めている場所に向かった。



「……マジか」

「やっぱりな」


 私達の船の前で、兵隊さんみたいな人達が群がっている。

 これ、もしかして私達を待ってる?


「ナオ、船に部外者は入れないようになってるだろ。自動防衛システム」

「うん、そう」

「だから、俺らを待ち伏せしてるって事だ。アイツ等は。まぁ、魅力的な船ではあるからな」



 ______________
 船長が不在となる為、クルー以外の部外者の船への侵入を禁止しますか?
  《はい/いいえ》
 ______________



 船から降りる際に私の目の前に出現したシステムウィンドウ。とりあえず私は《はい》と答えた。だから彼らは船へ入れないはず。入れないからあそこに群がっているのね。


「戻るぞ」

「え?」

「これじゃあ面倒事になる。あの魔法アイテムを使おう」

「あ、うん」


 ヴィンスの言う魔法アイテムとは、これの事だ。



 ______________
 アイテム:魔法の買い物用エコバッグ
  購入した品物を入れておけるバッグです。
  見た目よりはるかに多く入れる事が可能です。
  軽量化されており、いくつ入れても重くなりません。
 ______________



 こんなものがあるとは全く思いもしなかった。でも普通にキッチンにあったんだよね、折りたためるやつ。

 でもこれは非常事態の為に取っておこうとヴィンスが言ったのだ。

 この異世界には魔法道具が溢れかえっているみたいだけれど、こんな優れものは魔道士や貴族しか持っていない。だから人前で使うのはやめた方がいいと言われた。

 でも今は非常事態、ヴィンスが持っている粉などは人目の付かない所で広げたエコバッグに全部入れてからその場を離れたのだ。


「それで、どうするの?」

「もう夕方だから、宿を見つけよう。格安の所になるが……いいか」

「あ、うん、全然大丈夫」


 いや、それよりもあんなに買い物しても宿に泊まれることがびっくりなんだけど。恐るべし、塩とぶどうジャム。


「きっとあの衛兵達はどこかの貴族が派遣したんだろ。あんなに上等な剣や鎧を所持してるって事は、少し上の貴族に雇われてるって事だ」

「え、マジですか」

「あぁ、ちょっと面倒だな。とりあえず、今俺らを探してるはずだから一旦隠れよう」

「うん」


 ……なんか、やばい事になってきちゃった?

 異世界、怖い。

< 13 / 29 >

この作品をシェア

pagetop