異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!
◇29 やっぱりラストもこれなのね!?
王様のおかげでサーセストの船と身分証もろもろをいただけることになった。
これで今までしてきた苦労がなくなるぞ!
なんて思いつつご飯を食べていたんだけど……
「では、この場をお借りして私から陛下方にご報告がございます」
と、いきなりヴィンスが言い出したので、背筋がゾクッとした。
ヴィンスのその笑顔。
ダメだ、これはダメなやつだ。そう思っていたけど、止められるはずがなく。
「この度私、ナオさんの所に婿入りする事にしました」
「え」
「は」
「ん?」
少しの沈黙。
そして……
「えぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!?!?!?」
「はぁ!?」
「待て待て待てい!! 今何と!!」
「おや、耳遠くなりました? だから、ナオの所に婿に行くって言ったんですよ。つきましては、王位継承権も破棄させていただきますよ」
……耳、私も遠くなったかも。おかしいぞ、あり得ない事を口にしてるぞこの王子様。
そう思いつつも、手を繋がれ引っ張られ席を立たされたが何も言えなかった。一体私はどんな顔をすればいいのだろうか。
「と、とりあえずちゃんと話を……」
「いえ、もう決めたんで。どうかお元気で」
あっ、もう顔面蒼白じゃん。お三方。
向こう側に座ってた弟さん、勢いよく立ち上がって……
「俺の事見捨てる気!? 兄さんっ!!」
「いや、お前が何とかしろよ」
「嫌だよ!! 四六時中剣先向けられるなんて事されたくないよっ!!」
「お前ならいけるだろ」
「鬼っ!!」
え、何この兄弟喧嘩。内容が凄すぎるんですけど。てか、四六時中剣先向けられるとか……ご愁傷様です、次期王様。
「んじゃ、気が向いたら里帰りするんでそん時はよろしくお願いします。持参金とかそういうのもいらないんでご心配なく」
「じゃなくて!!」
「じゃあお元気で」
じゃ行こ、と窓に早歩きで連れてかれた。
え、待って、このパターンは……
「シャロン!!」
やっぱりこれかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「ちょっヴィンス!?」
「何てこと!?」
「私はそんな子に育てた覚えはありませんよっ!!」
「だってここに長時間いるとどうせアンタら何が何でも引き留めようとするだろ」
「い、いや、色々と準備とか……ほら、身分証とか船とか……」
「もう準備済みですんでご心配なく」
「我が息子ながら手際がいいなっっ!!」
「そういう所をそんな事に使ってほしくなかったわっっ!!」
……これが家族でする会話ですか? え、いいの?
え、ちょっと、泣いてない? 大丈夫ですか?
「では、お元気で」
ぎゃっ。
またまた肩に私を担ぎ、そして、シャロン君の爪に掴まって、飛び立ったのだ。
ぎゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!
「あははっ、悪いな、こんな出航続きで」
「喋らないでっ!! 絶対落とさないでっ!!」
「落とす訳ないだろ、俺の大事な花嫁なんだから」
「そういうの今はいらないからっ!! お願いだからやめてっ!!」
でも、最初の頃よりはまぁ慣れ……ないわっ!! んな訳ないだろっ!!
はぁ、こんなことがこれからも続くと思うと……気が重い。もうやめて、お願いだから。
そんな時、聞こえてきた。
「殿下ぁぁぁ!!」
船が見えてきて、そして船の近くでヴィンスを呼ぶ声。あ、あの護衛役さんだ。
その人は、その殿下に何か小さなものを投げ、ヴィンスはそれをキャッチ。俺も船にいいですかぁぁぁ!! という叫びに、
「いい訳ないだろ、邪魔だ」
と。怖いな、殿下。
いつも通り、そのまま船の甲板に着地。そして……
「出航!!」
と、なった。
全く、こんな出国になる事は想像もしてなかった。
「……いいんですか、殿下さんよ。実の親にそんな事言っちゃって」
「いや? 俺一生ナオの所にいるって言ったし。もうプロポーズのようなもんだろ」
「……」
あ、そうなんだ。
と思っていたら、小さな箱を渡された。何だか高級そうな箱だ。中身は……
「わぁ、ピアス」
「俺が幼少期から成人までずっとつけてたピアス。それを結婚した伴侶に送るのが王族の習わしなんだ。ナオ、持っててよ」
「王太子妃? になんてなりたくないんですけど」
「いや、もう俺王位継承権破棄してきたし。だから晴れて俺はただのヴィンスだ」
あ……だから自国に帰ったのね。これが目的で。
あれ? なんか持ってる。小さい布の袋?
「あぁこれか。これは魔道具で、ナオの持ってるエコバッグ? と一緒だ。アイツにお使いを任せたんだよ。えぇと、あの国の特産品とか、寝具とか、酒とかが入ってる」
「う、わぁ……」
え、寝具って言った? あ、まぁ船にある寝具は寝づらいだろうし布団も冬になったら寒いだろうし……でもそれに入れたんだ。どうやって入れたんだろ。
「持参金としては十分だろ。船も身分証その他諸々もあるし」
……怖いんですけど、私この人と一緒にいて大丈夫かしら。
危機感を覚えたけど、まぁ味方でいてくれるなら安心だ。
ヴィンスのご両親に嘘ついちゃったのは心苦しいけれど、でも感謝して。
「これからもよろしくね、ヴィンス」
「あぁ、ナオ」
ヴィンスと、あと忘れちゃいけないシャロン君との航海の旅を続けよう。
END.
これで今までしてきた苦労がなくなるぞ!
なんて思いつつご飯を食べていたんだけど……
「では、この場をお借りして私から陛下方にご報告がございます」
と、いきなりヴィンスが言い出したので、背筋がゾクッとした。
ヴィンスのその笑顔。
ダメだ、これはダメなやつだ。そう思っていたけど、止められるはずがなく。
「この度私、ナオさんの所に婿入りする事にしました」
「え」
「は」
「ん?」
少しの沈黙。
そして……
「えぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!?!?!?」
「はぁ!?」
「待て待て待てい!! 今何と!!」
「おや、耳遠くなりました? だから、ナオの所に婿に行くって言ったんですよ。つきましては、王位継承権も破棄させていただきますよ」
……耳、私も遠くなったかも。おかしいぞ、あり得ない事を口にしてるぞこの王子様。
そう思いつつも、手を繋がれ引っ張られ席を立たされたが何も言えなかった。一体私はどんな顔をすればいいのだろうか。
「と、とりあえずちゃんと話を……」
「いえ、もう決めたんで。どうかお元気で」
あっ、もう顔面蒼白じゃん。お三方。
向こう側に座ってた弟さん、勢いよく立ち上がって……
「俺の事見捨てる気!? 兄さんっ!!」
「いや、お前が何とかしろよ」
「嫌だよ!! 四六時中剣先向けられるなんて事されたくないよっ!!」
「お前ならいけるだろ」
「鬼っ!!」
え、何この兄弟喧嘩。内容が凄すぎるんですけど。てか、四六時中剣先向けられるとか……ご愁傷様です、次期王様。
「んじゃ、気が向いたら里帰りするんでそん時はよろしくお願いします。持参金とかそういうのもいらないんでご心配なく」
「じゃなくて!!」
「じゃあお元気で」
じゃ行こ、と窓に早歩きで連れてかれた。
え、待って、このパターンは……
「シャロン!!」
やっぱりこれかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「ちょっヴィンス!?」
「何てこと!?」
「私はそんな子に育てた覚えはありませんよっ!!」
「だってここに長時間いるとどうせアンタら何が何でも引き留めようとするだろ」
「い、いや、色々と準備とか……ほら、身分証とか船とか……」
「もう準備済みですんでご心配なく」
「我が息子ながら手際がいいなっっ!!」
「そういう所をそんな事に使ってほしくなかったわっっ!!」
……これが家族でする会話ですか? え、いいの?
え、ちょっと、泣いてない? 大丈夫ですか?
「では、お元気で」
ぎゃっ。
またまた肩に私を担ぎ、そして、シャロン君の爪に掴まって、飛び立ったのだ。
ぎゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!
「あははっ、悪いな、こんな出航続きで」
「喋らないでっ!! 絶対落とさないでっ!!」
「落とす訳ないだろ、俺の大事な花嫁なんだから」
「そういうの今はいらないからっ!! お願いだからやめてっ!!」
でも、最初の頃よりはまぁ慣れ……ないわっ!! んな訳ないだろっ!!
はぁ、こんなことがこれからも続くと思うと……気が重い。もうやめて、お願いだから。
そんな時、聞こえてきた。
「殿下ぁぁぁ!!」
船が見えてきて、そして船の近くでヴィンスを呼ぶ声。あ、あの護衛役さんだ。
その人は、その殿下に何か小さなものを投げ、ヴィンスはそれをキャッチ。俺も船にいいですかぁぁぁ!! という叫びに、
「いい訳ないだろ、邪魔だ」
と。怖いな、殿下。
いつも通り、そのまま船の甲板に着地。そして……
「出航!!」
と、なった。
全く、こんな出国になる事は想像もしてなかった。
「……いいんですか、殿下さんよ。実の親にそんな事言っちゃって」
「いや? 俺一生ナオの所にいるって言ったし。もうプロポーズのようなもんだろ」
「……」
あ、そうなんだ。
と思っていたら、小さな箱を渡された。何だか高級そうな箱だ。中身は……
「わぁ、ピアス」
「俺が幼少期から成人までずっとつけてたピアス。それを結婚した伴侶に送るのが王族の習わしなんだ。ナオ、持っててよ」
「王太子妃? になんてなりたくないんですけど」
「いや、もう俺王位継承権破棄してきたし。だから晴れて俺はただのヴィンスだ」
あ……だから自国に帰ったのね。これが目的で。
あれ? なんか持ってる。小さい布の袋?
「あぁこれか。これは魔道具で、ナオの持ってるエコバッグ? と一緒だ。アイツにお使いを任せたんだよ。えぇと、あの国の特産品とか、寝具とか、酒とかが入ってる」
「う、わぁ……」
え、寝具って言った? あ、まぁ船にある寝具は寝づらいだろうし布団も冬になったら寒いだろうし……でもそれに入れたんだ。どうやって入れたんだろ。
「持参金としては十分だろ。船も身分証その他諸々もあるし」
……怖いんですけど、私この人と一緒にいて大丈夫かしら。
危機感を覚えたけど、まぁ味方でいてくれるなら安心だ。
ヴィンスのご両親に嘘ついちゃったのは心苦しいけれど、でも感謝して。
「これからもよろしくね、ヴィンス」
「あぁ、ナオ」
ヴィンスと、あと忘れちゃいけないシャロン君との航海の旅を続けよう。
END.