後ろの席のヤンキーくんと甘いヒミツ
後ろの席の緒方くん


高校1年生になって1ヶ月ほどが経った、ある日の朝。


「えっ、何これ……」


朝登校してくると、私・衛藤(えとう)彩音(あやね)の下駄箱に小さな紙袋が置かれていた。


何だろうと、恐る恐る紙袋を覗いてみると。


中にはピンクのリボンで可愛くラッピングされた、クッキーが入っていた。


紙袋には手作りと思われるクッキーがあるだけで、手紙も何も入っておらず贈り主は不明。


「彩音、何持ってるの……って、クッキー?」


中学生の頃からの友達で、クラスメイトのメイサが横から私の手元を覗きこんでくる。


「うん。でも、名前が書いてなくて」

「えっ。誰から貰った物か分からないなんて、怖くない!? 彩音、それ今すぐ捨てたほうがいいよ」


メイサの顔が、サッと青ざめる。


でも、捨てるのはもったいないし……と思った私は、紙袋を教室まで持って行くことにした。


メイサと3階まで階段をのぼり、そこから少し歩いて教室に到着。


私は、自分の席に座りながらさっきのクッキーをじっと見つめる。


このクッキー、美味しそうだなあ。


チョコチップのクッキーを眺めながら、ゴクリと唾を飲み込む私。


今朝は少し寝坊したせいで、朝ご飯を満足に食べられなかったんだよね。


メイサにはさっき、危ないからクッキーを食べるのはよせって言われたけど……。


お腹が空いていた私は、差出人不明のクッキーを思い切って食べてみることにした。

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