後ろの席のヤンキーくんと甘いヒミツ


緒方くんのお菓子が気に入った私は、それからも変わらず彼にお菓子を作ってもらうことになった。


『これからお菓子は下駄箱じゃなくて、教室で直接受け取るよ。そのほうが手間も省けて良いでしょう?』と、私は彼に提案したけれど。


『こんな俺の趣味がお菓子作りだって周りに知られるのは、ちょっと恥ずかしくて……』と、緒方くんが言うから。


私は毎朝早く登校して、誰もいない教室で緒方くんからお菓子を受け取るようになった。


それから、ついでという訳じゃないけど。


朝、クラスメイトが誰もいないふたりきりの教室で、私は緒方くんと話すようになった。


席が前後の私たちは、お互い向かい合って座り、おしゃべりする。


最初は私と目も合わせてくれず、あまり自分から話してくれなかった彼だけど。


日を重ねるうちに慣れてきたのか、時折私の目を見て話してくれるようになった。


学校のことや、昨日観たテレビのこと。


たいていは、なんてことのない世間話というか、雑談みたいなものだけど。


緒方くんは私の話をウンウンと、よく聞いてくれて。


彼と話すこの朝のちょっとした秘密の時間が、少しずつ私のなかでとても心地のよいものになりつつあった。

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