後ろの席のヤンキーくんと甘いヒミツ
お昼休み。
私は友達のメイサと机を合わせ、今日の朝に緒方くんからもらった手作りのドーナツを食べている。
「彩音、そのドーナツはもしかして……」
「そう。例の人から貰ったものだよ」
「ということは……まだ、謎のお菓子のプレゼントは今も続いてるんだ?」
「うん」
メイサと話しながら、私はドーナツをモグモグする。
「犯人は……って、言い方が良くないか。お菓子の贈り主は、まだ誰か分からないの?」
「あー……」
メイサに聞かれて、一瞬言い淀む。
本当は、とっくに緒方くんだって分かっているけど。私はメイサに話していない。
お菓子作りのことは誰にも言わないで欲しいと、緒方くんに言われたことをずっと守っている。
「えっと……実は、まだ誰か分かってないんだよね」
「ええっ! もうすぐ1ヶ月近くになるのに。まだお菓子を贈り続けているなんて、その人もよく飽きないよね……」
目を丸くするメイサに、私は内心苦笑い。
手作りお菓子の継続は、本当は私が緒方くんにお願いしたことだから。
「でも、このお菓子はすごく美味しいし。私は毎日この人の手作りのものが食べられて、幸せだから。問題ないよ!」
私はメイサに、笑顔で言い切ってみせた。
このことは、私と緒方くんだけのヒミツ。
このヒミツが、これからもずっと続けば良いのに……。