後ろの席のヤンキーくんと甘いヒミツ


あんなことがあったあとなら、ここは真っ直ぐ家に帰るべきなのかもしれないけど……。


「私は……緒方くんと、もう少し一緒にいたい」


私は緒方くんの服の袖を、キュッと掴む。


このとき私は、なぜか緒方くんと離れたくないと思った。

彼と、もっと一緒に……いたいと思った。


「衛藤さん……」


緒方くんは私が彼の袖を掴んでいる手に、そっと自分の手を添えてくる。


緒方くんの手……大きくて温かい。


「分かった。それじゃあ、もう少しだけ一緒にいようか」


それから、緒方くんが気になっていたというカフェに二人で向かった。


歩いているときも、大きくて温かい手は繋がれたまま。


「ここだよ」

「わあ」


緒方くんに連れられてやって来たのは、外観だけでなく内装も女の子向けのファンシーなお店。

確かに、ここのお店は男の人だけだと入るのに勇気がいるかもしれない。でも、すごく可愛いカフェだ。


入店して席に着くと、それぞれ気になったケーキを注文。


緒方くんは、今の季節限定だというレモンのショートケーキ。私は、ガトーショコラ。


「んー、うめぇ」


緒方くんは、幸せそうな顔で注文したケーキを頬張っている。


「甘酸っぱいレモンクリームが、最高だな〜」


ふふ。ケーキを食べる緒方くん、子どもみたいで可愛いな。


「色々あったけど……俺、今日衛藤さんとここに来られてすっげー嬉しいよ。ありがとうな」


緒方くんにニコッと微笑まれ、鼓動が小さく音を立てる。


うわ。この感じ、まただ……。

< 23 / 39 >

この作品をシェア

pagetop