後ろの席のヤンキーくんと甘いヒミツ
あんなことがあったあとなら、ここは真っ直ぐ家に帰るべきなのかもしれないけど……。
「私は……緒方くんと、もう少し一緒にいたい」
私は緒方くんの服の袖を、キュッと掴む。
このとき私は、なぜか緒方くんと離れたくないと思った。
彼と、もっと一緒に……いたいと思った。
「衛藤さん……」
緒方くんは私が彼の袖を掴んでいる手に、そっと自分の手を添えてくる。
緒方くんの手……大きくて温かい。
「分かった。それじゃあ、もう少しだけ一緒にいようか」
それから、緒方くんが気になっていたというカフェに二人で向かった。
歩いているときも、大きくて温かい手は繋がれたまま。
「ここだよ」
「わあ」
緒方くんに連れられてやって来たのは、外観だけでなく内装も女の子向けのファンシーなお店。
確かに、ここのお店は男の人だけだと入るのに勇気がいるかもしれない。でも、すごく可愛いカフェだ。
入店して席に着くと、それぞれ気になったケーキを注文。
緒方くんは、今の季節限定だというレモンのショートケーキ。私は、ガトーショコラ。
「んー、うめぇ」
緒方くんは、幸せそうな顔で注文したケーキを頬張っている。
「甘酸っぱいレモンクリームが、最高だな〜」
ふふ。ケーキを食べる緒方くん、子どもみたいで可愛いな。
「色々あったけど……俺、今日衛藤さんとここに来られてすっげー嬉しいよ。ありがとうな」
緒方くんにニコッと微笑まれ、鼓動が小さく音を立てる。
うわ。この感じ、まただ……。