後ろの席のヤンキーくんと甘いヒミツ


もう、ダメなのかな。


諦めるしかないのかな。


自分ひとりではもうどうにもならず、私の頬を冷たいものが伝ったとき。


「あの、先生……」


クラスで学級委員を務めている真田(さなだ)さんが、遠慮がちに手を挙げた。


「真田、どうした?」

「あの……実は一昨日のあの日、わたしもその現場を見てました」


え!?


「買い物をして街を歩いてたら、どこからか揉めてるような声が聞こえて。気になってそっちを見てみたら、衛藤さんが絡まれてて。金髪と赤髪の、ガラの悪そうな男の人に」

「そう。そうだよ、真田さん! その金髪と赤髪の人!」


私は思わず、声をあげてしまう。


「急いで助けを呼ばなきゃって思っていたら、そこに緒方くんが走って来て。先に殴りかかろうとした金髪の人に、緒方くんがやり返したって感じでした。だから……衛藤さんの言うように、本当に緒方くんは悪くないです」


真田さん……。


「先生。緒方くんは不良に絡まれて困っていた衛藤さんを助けてあげた、優しいクラスメイトだと思います」


真田さんの言葉に、私の目からは再び涙が溢れた。

< 31 / 39 >

この作品をシェア

pagetop