後ろの席のヤンキーくんと甘いヒミツ
もう、ダメなのかな。
諦めるしかないのかな。
自分ひとりではもうどうにもならず、私の頬を冷たいものが伝ったとき。
「あの、先生……」
クラスで学級委員を務めている真田さんが、遠慮がちに手を挙げた。
「真田、どうした?」
「あの……実は一昨日のあの日、わたしもその現場を見てました」
え!?
「買い物をして街を歩いてたら、どこからか揉めてるような声が聞こえて。気になってそっちを見てみたら、衛藤さんが絡まれてて。金髪と赤髪の、ガラの悪そうな男の人に」
「そう。そうだよ、真田さん! その金髪と赤髪の人!」
私は思わず、声をあげてしまう。
「急いで助けを呼ばなきゃって思っていたら、そこに緒方くんが走って来て。先に殴りかかろうとした金髪の人に、緒方くんがやり返したって感じでした。だから……衛藤さんの言うように、本当に緒方くんは悪くないです」
真田さん……。
「先生。緒方くんは不良に絡まれて困っていた衛藤さんを助けてあげた、優しいクラスメイトだと思います」
真田さんの言葉に、私の目からは再び涙が溢れた。