後ろの席のヤンキーくんと甘いヒミツ
「うん?」
「衛藤さん、ゴールデンウィークのときに、ウチのばあちゃんのこと助けてくれただろ?」
「ばあちゃん??」
緒方くんに言われて、はてと首を傾ける私。
おばあちゃん、おばあちゃん……あっ! そうだ。思い出した。
あれは1週間ほど前の、ゴールデンウィークのある日。
友達との、ショッピングからの帰り道。
駅へと向かって歩いていると、私の少し前を歩いていた白髪の高齢女性が何かにつまずいて転倒してしまった。
『だっ、大丈夫ですか!?』
私は慌てて、高齢女性の元へと駆け寄る。
『えっ、ええ……っ』
女性は膝を擦りむいたみたいで、顔をわずかに歪める。
『あの、私絆創膏持ってるんで。良かったら……』
私は女性の少し出血している膝をハンカチで軽く押さえると、持っていた絆創膏を貼った。
『きちんと手当できなくて、ごめんなさい』
『いえいえ。ありがとう、お嬢さん』
『あの、おばあさん。駅まで行かれるんですか? 私も駅まで行くので、もし良かったら荷物お持ちします!』
『まあ、いいの?』
『はいっ!』
それから私はおばあさんの買い物袋を持って、二人で一緒に駅まで歩いた。
『どうも、ご親切にありがとう』
『いえいえ。困ったときは、お互い様ですから』
『あの、良かったら何かお礼をさせて欲しいんだけど』
『そんな! お礼なんて、とんでもない!』
お礼なんて申し訳なくて。私が繰り返し拒否していると、せめて名前だけでも教えてと言われて名乗ったんだったっけ。