天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする③
彼女は隠す。その本心を
コンラッド王子の妹の歓迎をするための夜会が開かれた。ノリノリの臣下達にウンザリする。だけど、相手は大国の王女ゆえ、丁寧にもてなすというわけだ。
「まあ……あのドレスを見て。最新のデザインに素晴らしい生地。宝石の数もすごいわ」
「美しい銀色の髪ね」
リアンよりも飾り立てて現れる。その国の王妃よりも豪華にするなんて、礼儀に反するだろう?
……オレ、リアン贔屓すぎるか?
チラリとリアンを見たが、オレの隣でニッコリほほ笑むリアンは特に気にする様子もない。まあ、良いか。ドレスや宝石で競わなくても、リアンは可愛いし。
……やっぱりオレ、リアン贔屓すぎるか?
「ウィルバート、改めて紹介します。第四王女のシンシアだ」
「陛下、一曲、踊っていただけませんか?」
コンラッドの紹介の後に、積極的に声をかけてくる。リアンのことを無視するかのような二人の態度にイライラッとしてくる。王妃の前で普通ダンスに誘わないだろう?ダンスなんて断るに決まってる!
「悪いけ………」
「ウィルバート、遠いところからいらしたんだもの。一曲踊って差し上げても良いのでは?」
扇子を開いて、ゆったりとした口調で言うリアン。
ハア!?とオレはリアンの方を驚いて見た。
「王妃様、心遣いありがとうございます。なんだか仲良くできそうで嬉しい!」
親しげにリアンに向かって、そう言うシンシア。リアンは扇子をパラリと開き、その向こう側で優雅に笑う。
「可愛らしいお方ですわね」
「リアン……オレに何をさせようとしてるんだ!?」
そう耳打ちしたが、静かにリアンは扇越しにささやく。
「ここは踊っておいたらどうかしら?減るものでもないんだから……」
「時々、リアンの心がわからないよ」
リアンは扇子を外さない。口元を隠し、オレの言葉にも負けること無く言い返す。
「ウィルバート、今は、私の心よりも外交よ。がんばってね」
むしろ応援してくるのか!?半ばやけになってオレはシンシアと一曲踊る。満足げな臣下達、見守る周囲の視線。
踊り終わるとコンラッドとリアンがなにやら話をしているのが見えた。
「陛下、少し二人で夜風に当たりませんか?」
オレはそれどころじゃなくて、ギュッと拳を握りしめる。激しい感情を抑える。
近寄るシンシアを無視してコンラッドとリアンの話しているところへ足早に歩いて行く。
「ウィルバート?」
驚いたようにリアンがこちらを見た。扇子を持って………オレは持っていない方のリアンの手を握って、その場から連れ出した。
コンラッドのウィルバート!と呼ぶ声が聞こえたが、どうでもいい。
そんなことはどうでもいいんだ。
「夜会を抜け出すのはダメでしょ!?」
「リアン!扇子を外せ!」
つい語気が荒くなる。扇子を取り上げた。リアンの表情がハッキリわかる。
「か、返してよ!」
「返さない!」
顔色が悪い。明らかにおかしい。
「表情を隠すために扇子を使っていただろ!?」
グッと悔しげに顔を歪めるリアン。
「私は……まだ未熟だから、表情に出てしまうもの。隠さずにいれる自信はまだ無いのよ。扇子、返して」
「ダメだ。……リアンの思惑を話せ!今すぐに話せ。なにを考えている?他のやつを騙せてもオレを騙せると思うなよ!?」
「まだ確証がないことを話せないわ。これが誤解であれば、私はあなたの信頼を失うことになりかねないもの」
……なにをしてるんだろうか?リアンのことが時々わからない。だけど信頼はしてる。彼女を信じよう。ため息をついて、扇子を返す。
「信じて……しばらくは待つよ。だけど後宮にはリアン以外は入れない。これは変わらない。好きな人を守れなくて、国を守れるか?簡単に自分が決意したことをコロコロ変える王なんて誰がついていこうと思う?それだけはリアンにはっきりと告げておくからな!」
リアンの目が丸くなった。そして碧の目がキラキラとした。いつもの彼女だ。
「あら?王妃の仕事が半分になると怠惰に過ごせるって思ったんだけど?」
冗談を言える元気があるらしい。これなら大丈夫かとオレはやれやれと肩をすくめた。
夜会の会場に戻る気にはなれず、今夜はこのまま二人で後宮へ帰ったのだった。
彼女のすることは時々わからない。
だけどオレはたとえ彼女の策の中の手中に自分が入れられたとしても揺るがないものがある。
たった一つだけある。
光り輝く金の髪と碧色の目をしたリアンだけは何があっても手放さない。そのオレの強い想いを彼女はわかっているのだろうか?
「まあ……あのドレスを見て。最新のデザインに素晴らしい生地。宝石の数もすごいわ」
「美しい銀色の髪ね」
リアンよりも飾り立てて現れる。その国の王妃よりも豪華にするなんて、礼儀に反するだろう?
……オレ、リアン贔屓すぎるか?
チラリとリアンを見たが、オレの隣でニッコリほほ笑むリアンは特に気にする様子もない。まあ、良いか。ドレスや宝石で競わなくても、リアンは可愛いし。
……やっぱりオレ、リアン贔屓すぎるか?
「ウィルバート、改めて紹介します。第四王女のシンシアだ」
「陛下、一曲、踊っていただけませんか?」
コンラッドの紹介の後に、積極的に声をかけてくる。リアンのことを無視するかのような二人の態度にイライラッとしてくる。王妃の前で普通ダンスに誘わないだろう?ダンスなんて断るに決まってる!
「悪いけ………」
「ウィルバート、遠いところからいらしたんだもの。一曲踊って差し上げても良いのでは?」
扇子を開いて、ゆったりとした口調で言うリアン。
ハア!?とオレはリアンの方を驚いて見た。
「王妃様、心遣いありがとうございます。なんだか仲良くできそうで嬉しい!」
親しげにリアンに向かって、そう言うシンシア。リアンは扇子をパラリと開き、その向こう側で優雅に笑う。
「可愛らしいお方ですわね」
「リアン……オレに何をさせようとしてるんだ!?」
そう耳打ちしたが、静かにリアンは扇越しにささやく。
「ここは踊っておいたらどうかしら?減るものでもないんだから……」
「時々、リアンの心がわからないよ」
リアンは扇子を外さない。口元を隠し、オレの言葉にも負けること無く言い返す。
「ウィルバート、今は、私の心よりも外交よ。がんばってね」
むしろ応援してくるのか!?半ばやけになってオレはシンシアと一曲踊る。満足げな臣下達、見守る周囲の視線。
踊り終わるとコンラッドとリアンがなにやら話をしているのが見えた。
「陛下、少し二人で夜風に当たりませんか?」
オレはそれどころじゃなくて、ギュッと拳を握りしめる。激しい感情を抑える。
近寄るシンシアを無視してコンラッドとリアンの話しているところへ足早に歩いて行く。
「ウィルバート?」
驚いたようにリアンがこちらを見た。扇子を持って………オレは持っていない方のリアンの手を握って、その場から連れ出した。
コンラッドのウィルバート!と呼ぶ声が聞こえたが、どうでもいい。
そんなことはどうでもいいんだ。
「夜会を抜け出すのはダメでしょ!?」
「リアン!扇子を外せ!」
つい語気が荒くなる。扇子を取り上げた。リアンの表情がハッキリわかる。
「か、返してよ!」
「返さない!」
顔色が悪い。明らかにおかしい。
「表情を隠すために扇子を使っていただろ!?」
グッと悔しげに顔を歪めるリアン。
「私は……まだ未熟だから、表情に出てしまうもの。隠さずにいれる自信はまだ無いのよ。扇子、返して」
「ダメだ。……リアンの思惑を話せ!今すぐに話せ。なにを考えている?他のやつを騙せてもオレを騙せると思うなよ!?」
「まだ確証がないことを話せないわ。これが誤解であれば、私はあなたの信頼を失うことになりかねないもの」
……なにをしてるんだろうか?リアンのことが時々わからない。だけど信頼はしてる。彼女を信じよう。ため息をついて、扇子を返す。
「信じて……しばらくは待つよ。だけど後宮にはリアン以外は入れない。これは変わらない。好きな人を守れなくて、国を守れるか?簡単に自分が決意したことをコロコロ変える王なんて誰がついていこうと思う?それだけはリアンにはっきりと告げておくからな!」
リアンの目が丸くなった。そして碧の目がキラキラとした。いつもの彼女だ。
「あら?王妃の仕事が半分になると怠惰に過ごせるって思ったんだけど?」
冗談を言える元気があるらしい。これなら大丈夫かとオレはやれやれと肩をすくめた。
夜会の会場に戻る気にはなれず、今夜はこのまま二人で後宮へ帰ったのだった。
彼女のすることは時々わからない。
だけどオレはたとえ彼女の策の中の手中に自分が入れられたとしても揺るがないものがある。
たった一つだけある。
光り輝く金の髪と碧色の目をしたリアンだけは何があっても手放さない。そのオレの強い想いを彼女はわかっているのだろうか?