没落家出身令嬢は、エリート御曹司の香りに抗えない。





「……菜皆〜! ご子息様が帰ってきたって!」

「そうなのね……」


 レミがご子息様と言った瞬間、心臓がドキッと音を立てた。そして、身体中が熱くなるのを感じた。
 これはきっと……発情。抑制剤を飲んだはずなのに、足りなかったのかな。


「……っ……あ、つ」

「菜皆? 顔が真っ赤よ!? 体調悪い?」

「だ、大丈夫。ちょっと休めば、へーき……よ」


 私は限界を感じながら、休憩室へ向かった。

 向かう途中でメイドや執事に出会って心配されるが大丈夫だと言い耐える。最終的な救世主の緊急薬……こういう時に飲む薬を持ち運んでいたと思い出して探すがなかった。

 もうすぐ、使用人休憩室に到着するというところでフラッとふらつく。どうしよう……こんなとこで倒れちゃうなんてありえないし、このお屋敷にはアルファがほとんどだから発情する際のフェロモンでよって来るかもしれない。





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