没落家出身令嬢は、エリート御曹司の香りに抗えない。
番(つがい)、なんて
気を失った私が起きたのは外が真っ暗になり始めた頃だった。
「……あ、起きた?」
体を起こすと男性がいて飲み物を持って来てくれたが、誰?
「えっと、あの……」
「あぁ、ごめんね。僕は、鷹司汐良といいます。一応、この家の息子です。菜皆ちゃんだよね?」
「あっ、わ、私……は、はい。菜皆です。あの、ご子息様に、失礼なことをっ! 申し訳ありませんっ」
私はベッドから降りて頭を下げた。それにこのベッド……もしかして汐良様の、ベッド!?
「……ベッドもお借りしてしまいまして、すみませんでした!」
「頭を上げて、菜皆ちゃん。話をさせて欲しい」
汐良さまにベッドとは違うリビングのような部屋に連れられてソファに座らされる。
すると、待機していたのか見たことのないメイドがテーブルにお茶とサンドイッチなどが置かれているアフタヌーンティースタンドがおかれた。
「……ありがとうございます」
「いいえ、……では失礼いたします」
メイドはお辞儀をすると、部屋から出て行った。