没落家出身令嬢は、エリート御曹司の香りに抗えない。



「……どうして同じものがっ」

「これは、αにのみ教えられているのだが番がいる者は同じアザを持って生まれる。神が人間が偽らないように印としてアザを入れたのだと言われているよ」

「そう、なんですか」


 このアザを見てお祖父様や両親からは気味がられていたのを一瞬思い出した。だけど、これは番がいるという証だったのだと思ったら今までの辛かった日々が救われたように思える。


「だからね、菜皆ちゃんには俺とつがい契約をしてもらうよ」

「えっ、でも私、汐良様の番なんてふさわしくはありません」

「ふさわしいとかふさわしくないという問題じゃないんだ。生まれた時から番だと決まっていたし、それに昨日キスをして発情は治まっただろう? その時点でもう番として機能しているんだ」


 汐良様の説明では、番は体液を交わすことで発情は治るという。実際に私は発情が治ったし落ち着いた。だから、もう番だと証明されている。


「……俺と、つがい契約をしてほしい。いいだろうか?」

「……はい、喜んでお受けいたします。汐良様」



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