没落家出身令嬢は、エリート御曹司の香りに抗えない。



  ***


 あの日、汐良さまに番になろうと言われてから……私の日常は変わってしまった。

 メイドとして働いていたのに、汐良さまの番に働かせるわけにはいかないと言われてしまい学校以外はゆっくりと過ごしている……汐良さまと。


「菜皆ちゃん、書類が揃ったから一緒にサイン書こう」

「あ、はい」


 汐良さま付きの執事さんがテーブルに数枚の書類を置いた。

 番契約には二種類あり、ノーマルの番契約と運命の番契約だ。ノーマルの方はαが番になりましょうと求愛し、首筋を噛んで健康診断やら提出すると番の成立となるシンプルなものだ。
 一方、運命の番とは同じアザを持つ遺伝子的な相性で惹かれ合う番のことで首筋を噛むことはしない。提出するのも少なくて契約書にアザの記載をするだけだ。

 だから名前を記入をして、血判をする。


「では、菜皆さま。こちらに名前と血判を」


 血判とは、よく時代劇で指先を切り指紋を押したものだ。古い風習だと言う人がいるが、なかなか運命の番なんて出会うことはないため今も血判だ。
 初めは彼が押し、次に私が左手の親指にナイフで切り血が出たとこで押せばすぐに控えていたメイドが手当をしてくださった。

 契約は無事終わって私は彼の番となった。


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