没落家出身令嬢は、エリート御曹司の香りに抗えない。
朝になり朝食の準備をしていると、伯母様が家にやってきた。
「……っ、なみちゃん! そこ、どうしたの!?」
「あ、おはようございます……夜、少し」
指摘されたのは昨夜殴られた場所だ。赤かったが、時間が経って紫色になってきていた。殴られた時にものにぶつかってしまったからなぁ
「まさか、お父さん」
「大丈夫ですよ。すぐ、直りますし……でも、お金がもうなくて」
「本当にお父さんは……なみちゃん。そういう問題じゃないでしょ?」
ちなみに伯母様は、エリート階級のアルファだ。アルファなのに告げなかったのは、女だからだと聞いている。
なんでも、お祖父様がダメだと怒ったらしい。
「ちゃんと冷やした?」
「はい。お酒も流したかったので冷たいシャワーで」
「お酒?」
「あ、またかけられちゃったので……あはは、でも本当に大丈夫ですよ」
これ以上、言うと二人が言い争いになる。そうなると、お祖父様は手をつけられなくなるのだ。
「……はぁ、菜皆ちゃん。座って」
「は、はい」
真剣に言われて促されるまま、椅子に座る。
「菜皆ちゃん、一度ウチに行こう」
そう告げると伯母さまは、宿泊分の服を用意してきてと言い私を部屋に連れて行った。