没落家出身令嬢は、エリート御曹司の香りに抗えない。



「あっ、菜皆! 起きたんだね、おはよう」

「お、はよう……シズカ、お邪魔してます。すみません」


 この女の子はシズカといい、従姉妹で年上の大学生。


「よく眠れたかな? 菜皆ちゃん」

「はい。ありがとうございます。運んでくださって、ありがとうございます」

「全然いいよ。菜皆ちゃんなら大歓迎だよ」


 この人は伯母様の旦那様でナギトさん。お仕事はお医者様をしていてきっと殴られた痕を処置してくれたのは彼だろう。



「……大変だったね、菜皆ちゃん。しばらくいたらいいから、安心して」

「ありがとうございます」


 伯母様一家は優しくて、今まで張り詰めて頑張ってきたものが弾けて涙が出てくる。
 ずっと泣かなかったのに、ワンワン泣いてしまった。
 それからご飯を食べてゆっくりとお風呂に入った。



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