私に三次元の恋なんてありえない

振り回される桃

姫宮side
「なーかーむーらぁああぁああぁああぁあああああ!!!」


気づけば仲村のところまで猛烈ダッシュで走っていた。


「え、今の姫宮さ?」
「なんか、キャラ違くね??」




「あっ!いた!あれん!!探したんだよ」


「仲村ぁあぁ」



「なになになに、どうした?あのイケメンとなんかあった??」



食堂で全てを仲村に話した


「なるほどね〜〜、オタバレしたうえに付き合ってと言われたと」



「ねぇどういうことだと思う?」



「んー……単に桃のことが好きなんじゃなくて?」



「…ないないないないない!!!私なんて所詮オタクだよ!?」




「そっか〜……じゃあただのチャラ男だね」



「チャラ男……私が最も苦手とするあのチャオ男!?」



「そう、ただ遊ばれてるだけ」



「じゃあもう関わらない方がいいよね!」



「私は意外と、面白いと思うけどな〜〜あのイケメン」




「面白がらないでよ〜!」



「でもさ、オタクってバレても、ひかなかったんでしょ??」



「うん」



「それって、なんていうか、すっごくいいことなんじゃないの??」




「確かに……あいつ、実はいい奴だったりして??」



「………」


2人はしばらく黙って見つめ合った。



「いや、ないな」


「うん、ないね、人の弱みに漬け込むなんていい奴のすることじゃないもん!」



「あ、そうだ、今日一緒に帰れないごめん」



「なんで」



「先生に呼び出しくらった、日直だから雑用手伝えってさ」



「1人か〜」



「迷子にならないように気をつけるんだよ〜?」



「もう!子供じゃないから!」



「じゃあ気をつけてね、また明日」



「うん!また明日ね」



仲村の姿が見えなくなったところで


「よしっ…私も帰ろ」


と歩き出したが、ドアのところで


バンっ


急に視界に誰かの腕が入った



「せーんぱーい!迎えに来ましたよ?」




「……」


そこには扉に片手をついている一ノ瀬くんがいた。


私は逃げるという決断を0.1秒で考え出し、一ノ瀬くんと扉の間からスラリと抜けようとした


「おっと逃げようとしないで」


一ノ瀬くんに手を掴まれそのまま壁に押し付けられた


いわゆる壁ドンというものだ


「もう何なの!」



「一緒に帰ろってば」



「なんで!」



「なんでって、俺たちカップルなんだから当たり前でしょ??」



「はぁ!?」



「えっ、先輩もしかして、俺の愛の告白に気づいてなかったの!?」



「本気なの…」



「本気だよ??」



一ノ瀬くんはニコッと笑って言った。


いやダメだ!!


このイケメンスマイルに騙されてる!!


どうせ遊ばれてるだけだ!!



「ていうかさー、先輩に拒否権ないの分かってる??」




そうだ!!!私はこの男に弱みを握られてたんだ!!



「分かったよ!付き合えばいいんでしょ付き合えば!」



しまったやけくそになってしまった!




「じゃあカップル成立ってことで、帰りましょ?」




「あ……はい」





学校を出たら、周りがざわざわしていることに気づいた



「え!?姫宮先輩の隣にいる男だれ!?」
「1年じゃね??」
「結構かっこよくない??」
「お似合いカップルじゃん!」



違う!違うんです皆さん!!!


私はこの男に脅されてるんです!!


私に拒否権なんてないんです



「ねぇ」



「はひっ!!」



「先輩さ……距離遠くない??」


「え?普通だよ?:



「遠いっ」



「え!!!!普通だよ????」

「全然折れないね…」



「当ったり前でしょ」


「でも付き合ってるなら」


「きゃああぁあああぁぁああ!!!!!」


一ノ瀬くんが一気に距離を縮めてきた。

女子からは叫び声に近いようなものが聞こえる



「こんくらいが普通だよ?」



「……無理無理無理無理!!」



恥ずかしすぎて気づけば走っていた。



「あっ、ちょっと待って!」



しばらく走ったところで一ノ瀬くんが追いついてきた。




「い、一ノ瀬くんは家どこにあるの?」



「そこ、曲がったとこ」



「へぇ〜!じゃあここでバイバイだね!」



「なんでそんな嬉しそうなの…」



「いや、別に〜?」


やった!!これでバイバイできる!!!



「先輩の家は?どこ?」


絶対に言いたくない!!!



「…あっち!」



「誰が分かると思った?」



「一ノ瀬くんには教えないもんね〜!じゃあ!」



「あっ!!……逃げ足はや……ふっ笑」










ダンッ  


次の日の朝、私は驚きのあまり


鞄を地面に落としてしまった


なぜなら……



「あっ、おはよう先輩」




「な、ななっ、なんで五十嵐くんが私の家に??」




「付き合ってるならもちろん朝も一緒に学校行くんだよ?」




「てか何で私の家知ってるの!!」



「あの仲村先輩?に聞いた」



「どんな手使ったの!?!?まさか仲村まで脅したの!?」



「まさか、実は昨日、先輩帰った後」




仲村side


ん??あれは、うちの教室来たイケメンでは??


なんで一緒に帰ってんの??


桃が帰った後に話しかけてみることにした。



「ねぇ!!」


「ん?あっ!先輩の友達の」



「仲村菜々!!」



「ずっとつけてたんですか??」



「ほんとなら担任の雑用手伝うつもりだったけど、担任職員会議出てたから早く帰れたの、で校門出たらあんたたちがいたからつけてたの……」



「ちょうどよかった、姫宮先輩の家教えてください」



「なんで私が…」



「えぇ?俺の恋愛…応援してくれないんですか?」


まぶしっ!!!!



姫宮side
くっっそ!!あのイケメンスマイルにやられたか仲村!


「ずるいよ…」


「え?聞こえないです」



「絶対聞こえてるし!」



「もーつべこべ言わずいきますよ!学校遅刻したらどうするんですか!」


一ノ瀬くんは私の手を掴んで走った



「え…ちょっ!!///待って、はやいよ!」



学校の近くまでくると、走るのをやめてゆっくり歩き出した。


「あの〜走る必要ありました?」


「遅刻しそうだったから」



「手繋ぐ必要あります?」



「カップルなんだからもちろん」



「ねぇ…なんで私なの?」


純粋な疑問だった。



「…面白いから?」



「どこが」



「あの完璧女の先輩が実は超アニオタなんて、めっちゃ面白いじゃん??」



「全然面白くない」



「さらにそれを隠してるし、俺がちょっとでもオタバレしようとしたらめっちゃ焦って必死になって止めようとしてくるし」



こいつ………ドSか!?!?




「でも、そんな先輩がなんか可愛いんだよね〜」



「!?」


だめだ!!ドキドキなんかしたら負けだ!


私はその場に蹲った。



「先輩?」



「私に三次元の恋愛なんてできっこない!!勘違いしちゃダメっ!!」



自分の頬を強く叩いた。



「ねぇ、昨日から思ってたけどさ…先輩ってもしかして……恋愛経験ない?」



かっ…勘づかれていた!!



「そうですよ!彼氏なんて生まれこのかた出来たことないよ!!」



「ふはっはっ、それ、めっちゃ嬉しいかも」



「え?」



「俺が先輩のはじめてってことでしょ?」



「…私まだ五十嵐くんのこと好きになってません!」



「まだってことは可能性あるってこと?」



「ちっ、違っ!!」



「絶対好きにさせるから」



「!?……絶対好きにならないから!!///」


そう言って早歩きをした。
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