私に三次元の恋なんてありえない

波乱の体育大会

姫宮side

もう体育大会の時期が来てしまった

「それじゃあ体育大会の種目決めるぞ〜!」


先生がいつにもなく張り切っている。


「もう体育大会の時期か〜」



「お前なに出んの?」



「荷が重くないものならなんでもいいかな」



「ふーーん」


「次、学年対抗選抜リレー、今年から新しく追加された種目らしいが、クラスで男女1人出さなきゃいけない、誰か出てくれる人いないか??」



教室がざわついた。

そして1人の男子が立ち上がって言った。


「あのー!おれ、小野坂と姫宮さん推薦しまーす」



「はぁ!?!?」



驚きながら2人とも同時に立ち上がった。



「確かに!小野坂はサッカー部エースだし!!」
「姫宮さんなんでもできちゃうし!!!



いや理由になってないから!!!




「じゃあ〜、頼めるか?小野坂、姫宮」



「あ、私….!」



「やります!!!…桃と、出ます」



なぁ〜に勝手なことしてんの小野坂ぁああぁあ!!

と精一杯睨みをきかせたが、小野坂には届かず。



「よし、決まりだな」



「…頑張ろうな」



「う、うん……」



お昼休みになり、仲村と食堂で学食を貰っていた。


「選抜リレーとか、さっすがだね」



「私やりたくなかったのに…」



「小野坂とならいいんじゃない?」



「まぁ確かに安心だね」



「へぇ〜〜選抜リレー出るんだ」



「うん」


ん??なんか聞き慣れた声が後ろからしたような…


「ってなんでいる!?」


やっぱり一ノ瀬くんだった。



「ああ、一ノ瀬くん」



「どうも〜、昨日は先輩逃げちゃって一緒にお昼食べれなかったでしょ??」



「誰のせいだと?」



「あ、俺か笑」



「お昼も一緒に食べなきゃダメなの??」



「あったりまえじゃん、カップルだよ?」



「カップルの邪魔しちゃいけないし、私はこれで〜〜」



「え、ちょ!仲村!?!?待って!!…」


仲村はご機嫌そうにどこかへ行ってしまった。


最悪だ……!!


「…2人っきりだね」

「うるさい黙って」



「も〜、つれないな〜…一応俺も選抜リレー出るのに」




「足速いんだ」



「これでも中学生の時サッカー部だったからね」




「そうなんだ」


なんか意外かも



「ねぇ先輩、もし体育大会の選抜リレーで一位とったら、今度デートしよ?」




「デート!?!?」



「そう、デート」




「むっ、無理無理無理無理!!!レベルが高すぎるよ」



「なんでよ」




「だって、三次元のデートなんかしたことないし…」




「なら、俺がデートってもんを教えてあげる」



なんだこの溢れ出る恋愛上級者感は!!!!




「その前に、一位とれるか分からないし」



「…そうだね」



3年生相手に一位なんてとれるはずないか…。



「じゃあ約束」



「……分かった」


指切りをして約束をした。


そしてこの時まだ私は気づいていなかった。


ある女の子から嫉妬の視線をあびせられていることに。





あっという間に月日は流れ、体育大会当日。


「いっけいけいけいけいけ3年!!!」


「いっけいけいけいけいけ3年!!!!」


「おっせおせおせおせおせ3年!!」


「おっせおせおせおせおせ3年!!!!」



たった今、女子の選抜リレーが終わったところだった。



「お疲れ、一位おめでとう」



「ありがと」



「相変わらず足はえーんだな」



「まぁね」



「…さて、俺も頑張りますか」



「小野坂、アンカーだっけ?」



「おう」



「そっか〜大役だね」


私には到底できないや。


「あれん」


「ん?」



「俺、絶対一位とるから……見とけよ?」




「……うん!頑張って!」



「男子、学年対抗選抜リレーに出場する生徒は、入場ゲート付近に集まってください」


というアナウンスが流れた。



「いってくる」



「頑張れ」



小野坂side
入場ゲート付近につくと、なんだか見たことあるようなやつがいた。


「あっ、お前!!」



「???」



「あれんのストーカーの!!」



「やだなぁストーカーなんて、彼氏ですよ彼氏」



「はぁ!?!?」



「冗談ですよ、先輩こそ誰ですか??」


「桃の幼馴染の、小野坂凛」



「俺は一ノ瀬蓮です、小野坂先輩もその様子だと、姫宮先輩のこと好きなんだ〜」



「なめんな、こっちは10年片想いだぞ」



「分っかるな〜、姫宮先輩ってどんなにアピールしても全っ然振り向いてくれないもん!」



「おい後輩……あれんはぜってぇ渡さねぇぞ」



「…こっちのセリフですよ」




「お前もアンカーなんだ、じゃあ…正々堂々勝負だな」


「いいですよ、こっちも姫宮先輩とのデートかかってるんで」


「へぇ〜〜…………ん?デート」



「そうですけど??」



「はぁ!?!?デート!?!?!?」



「そんなに羨ましいんですか笑」


は、腹立つ〜!!!

「べ、別に!?俺だってちっちゃい頃からよく遊んでるし!?」



「動揺しすぎですよ笑」



「とにかく!俺が一位取ればいい話だ…」



「のぞむところです」






「それでは、出場選手を紹介します」




「頑張れ〜〜!!!」




「一年生、第一走者、橘さん、第二走者中島さん、第三者走者鈴村さん」



姫宮side
「あれぇ?五十嵐くん出てこないな〜〜、なんかあったのかな〜、心配だなぁ」


仲村〜〜〜!!!


「勝手なアフレコしないでそんなこと思ってないから」



「アンカー一ノ瀬さん」



「えっ!?あいつアンカーなの!?!?」


私も知らなかった。


「そんなに足早かったんだ」




「ちょっっと待って!?!?確か小野坂もアンカーじゃなかった!?!?!?」



「そうだよ?それがどうしたの」



「超〜修羅場じゃん!」



「修羅場?」


どういうことだろう??


「あーもうあんた鈍感すぎ!!こっちの話よ!」



そして選手紹介が終わり、パァンというピストルの後でスタートした。




「スタートしました!」



「頑張れ〜〜!!!!


バトンを渡して、繋いでを繰り返し、いつのまにかアンカーに近づいてきた。


「一年生と三年生が同率です!!」



「ふぅ……」



「あらら、ハンデなしっすか〜」



「あったりまえだろ」


小野坂と一ノ瀬くんが何か話していたけど、聞こえるはずもなく。

2人バトンをもらってダッシュ した。




「さぁ、一年生と三年生はアンカーにバトンが行き渡りました」



すごい……2人とも


「小野坂……粘ってる…」


「……」



「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁは」




どうしてだろう…


私の学年が勝って欲しいから小野坂を応援したいに


同じくらい……五十嵐くんも応援したい!!



「……五十嵐くん!!!!!」



ゴール目前、私は無意識に彼の名前を叫んでいた。



「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」



そしてそれに応えるかのように、一ノ瀬くんが小野坂をぬかして



「クッ……」


「はぁあ!!!」


一位でゴールした。



「わぁああああああああ!!!!!!」

「負けた〜!!」
「なぁんだよ!!」
「あの一年はやっ!!」



「ねぇ…あんた今…」



「どうしようっっ…なんで…!」


なんで一ノ瀬くんの名前なんか叫んだんだろう。





小野坂祭壇
体育大会が終わった週明け、なぜか俺は仲村に呼び出された。

「桃多分、一ノ瀬くんのことが気になりはじめてる…」



「はぁ!?嘘だろ!!」



「ほんと…体育祭のリレーで、咄嗟に一ノ瀬くんの名前叫んでた」



「…まぁでも……10年間、びびって告ってもない俺なんかを、あいつが好きになってくれるはずねぇよな」



「んなことは最初からわかってるわ」



「お前どっちの味方なんだよ!?!?」



「…そんなの……あれんを幸せにしてくれる奴の味方に決まってんでしょ」



「じゃあ…俺は、どうしたらいいんだよ」


もう、勝ち目ねぇじゃん……



「いい!!!桃は超鈍感なの、だから!!ちゃんと伝えないと、分かんないよ??」


「っ!?!?」


確かに俺は、この10年、桃にちゃんと自分の思いを伝えたことが、一度もなかった。
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