夢のおわり、君とはじめる恋の続き
それも小学四年生から前の記憶が私にはないからだ。


学校で事故に遭って頭を強く打ってしまったせいで、記憶障害が起きているのだと周りから聞かされた。


自分が誰なのかとか日常的な学習能力とかはちゃんとわかるのに、十年分の思い出が私の中から消えてしまったのだ。



いつか戻るかもしれないし、戻らないかもしれない。


そのことから忘れてしまうということが怖くて、毎日の出来事を日記につけるようにしている。


毎朝見返して思い出すことで安心することができるから。


もう私は何も忘れたくない。これ以上、空っぽな思い出で苦しい思いをしたくない。





「凪咲、おはよう」



眠い目をこすりながら学校への道を歩いていると、後ろからスポーツバッグを肩にかけたセンター分けの茶髪男子が爽やかな笑顔で声をかけてきた。


彼は一つ年上の先輩、水野太陽(みずのたいよう)
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