来世に期待します〜出涸らし令嬢と呼ばれた私が悪い魔法使いに名を与えられ溺愛されるまで〜
出涸らし令嬢と王都の危機
「オズ様。茶葉への光魔法の付与、しておきました」
「あぁ、ありがとう。助かる。……うん、良い色だ」
私はオズ様が魔法を付与した魔法薬茶の茶葉に、さらに光魔法を付与するという大役を任され、最近は毎日光魔法を使っている。
何でもお師匠様の話によると、使い方やコントロールをマスターしたら、あとは魔力を発散させることも大切になるのだそう。
薬草は通常オズ様が乾燥させてこげ茶色になっているけれど、私が光魔法を施すと綺麗な金色に変化する。
こうして作った光魔法入りの魔法薬茶は、薬草の効能も、オズ様の魔法の効果もパワーアップさせ、且つ、体力の回復もしてくれるのだ。
多少の疲れは出るものの、毎日作り続けて一部屋が全部光魔法入りの茶葉置き場になるくらいにはストックができた。
これでもしまた流行り病の時期が来ても安心だ。
「オズ様、私、オズ様の助手として、この町の人の役に立てているでしょうか?」
1をしてあげても1が返ってくる。
そんな優しい、支えあいをしてくれるこの町で、私はその1になれているのだろうか。
そう時々不安になる。
視線を伏せた私の頭上に、ふわりと大きなぬくもりが降ってきた。
「あぁ。よくやってくれてる。町の皆もセシリアが来てくれて助かっていると、喜んでいるしな。ありがとう、セシリア」
「お、オズ様っ……」
最近オズ様は二人きりの時にはよく私の頭をこうして優しく撫でてくれる。
とても幸せな気持ちになって、思わず魔力が溢れて花を咲かせてしまうこともしばしばあるのだから、感情が駄々洩れになっているようで少し恥ずかしい。
私が恥ずかしさにオズ様から視線をそらした、その時だった。
「オズ―!! ってごめん取り込み中!? お、お邪魔だった!?」
相変わらずノックもなしに入ってきては両手で顔を覆い、指の間からこちらを覗き見るのは毎度おなじみのドルト先生。
「貴様……ノックをしろと何度も……!!」
「ってそれどころじゃないんだよっ!! 大変なんだ!! 王都が……王都が、このままじゃ死の都になる!!」
「!?」
「死の──都──?」
人と人が行き交い賑わいを見せるあの都が?
一体、何で……。
「どういうことだ、説明しろ」
オズ様も気になったようで、ドルト先生に迫るように尋ねる。
「実は、ここで流行っていた季節性の流行り病が、王都でもはやり始めたんだ。これは毎年のことだけれど、今年のこれは質が悪い。ここで流行ったのと同じように今年は広まりも早くて、免疫もほぼ効かない。王都はこの町の比じゃないほどに人口も多いし人の行き交いが盛んだから、余計に人から人へと移ってしまって大流行しているらしいんだ。王都の治療院に人が押しかけてパンク寸前だし、僕も手伝いに行かないといけない。オズ、良いかな?」
治療院がパンク状態……。
となれば普段から医師にかかっている人の診察すらできない状態になって、被害が別の部分でも出てくる。
近隣の町から応援を、となるのは当然なのだろうけれど……。
「……そうだな。仕方あるまい」
この町にはドルト先生しかお医者さんはいない。
ドルト先生がいない間、かかりつけで通っている人たちは?
信頼するお医者さんが長期にわたっていないということに不安を覚えるだろう。
彼に代わりはない……!!
「──あのっ!!」
「セシリア?」
気が付けば、私は声を上げていた。
「私が行きます」
「セシリアちゃんが!?」
「はい。私なら、光魔法でなんとかできると思うんです」
この町の人達の怪我を治した時と同じように光魔法を使えば。
ここのところ魔力が安定しているし、量も増えている気がする。
今ならたくさんの魔力を使っても大丈夫だろう。
「だが王都で力を使えば、君のことが知られることに──」
「大丈夫です。私が行って、ちゃちゃっと終わらせた方が効率が良いですし、それに……この町には、ドルト先生が必要だから」
「っ……セシリアちゃん……」
「私が大好きなこの町の人達には、不安なく、元気でいてほしい。私、ちゃんと帰ってきますから。……オズ様さえ、よければ……」
オズ様が帰ってくるなというのならば話は別だけれど、彼が帰ってきても良いと言ってくれるなら、私はここに帰ってきたい。
ちらりとオズ様に視線を移すと、未だ眉間にしわを寄せたオズ様が「ぐっ」と唸った。
「君の居場所はここだ。が……一人で行っても帰ってくる保証はない。俺も行く」
「オズ様が?」
も、もしかして一人では迷子になるとか思われてる!?
子ども扱いされてるの私!?
「オーズ。言葉足らずは良くないよ。ちゃんと言ってあげないと。セシリアちゃんがあちらに取り込まれて帰ってこないんじゃないかと心配してるって」
「っドルト!!」
へ?
心配、してくれてるの?
私を?
遠慮がちにオズ様に視線を向けると、オズ様は頬を赤くして視線をそらし、口を開いた。
「聖女の力を見た良からぬ者に攫われる可能性もあるからな。……その……無事に君が帰ってこなければ困るし……。とにかく!! 俺も行く。ドルト、留守を頼んだぞ。セシリア、急いで支度をする。まる子とカンタロウに知らせてくれ」
「!! はいっ!!」
私はオズ様の気持ちに暖かさを感じながら、はっきりと返事をした。
「あぁ、ありがとう。助かる。……うん、良い色だ」
私はオズ様が魔法を付与した魔法薬茶の茶葉に、さらに光魔法を付与するという大役を任され、最近は毎日光魔法を使っている。
何でもお師匠様の話によると、使い方やコントロールをマスターしたら、あとは魔力を発散させることも大切になるのだそう。
薬草は通常オズ様が乾燥させてこげ茶色になっているけれど、私が光魔法を施すと綺麗な金色に変化する。
こうして作った光魔法入りの魔法薬茶は、薬草の効能も、オズ様の魔法の効果もパワーアップさせ、且つ、体力の回復もしてくれるのだ。
多少の疲れは出るものの、毎日作り続けて一部屋が全部光魔法入りの茶葉置き場になるくらいにはストックができた。
これでもしまた流行り病の時期が来ても安心だ。
「オズ様、私、オズ様の助手として、この町の人の役に立てているでしょうか?」
1をしてあげても1が返ってくる。
そんな優しい、支えあいをしてくれるこの町で、私はその1になれているのだろうか。
そう時々不安になる。
視線を伏せた私の頭上に、ふわりと大きなぬくもりが降ってきた。
「あぁ。よくやってくれてる。町の皆もセシリアが来てくれて助かっていると、喜んでいるしな。ありがとう、セシリア」
「お、オズ様っ……」
最近オズ様は二人きりの時にはよく私の頭をこうして優しく撫でてくれる。
とても幸せな気持ちになって、思わず魔力が溢れて花を咲かせてしまうこともしばしばあるのだから、感情が駄々洩れになっているようで少し恥ずかしい。
私が恥ずかしさにオズ様から視線をそらした、その時だった。
「オズ―!! ってごめん取り込み中!? お、お邪魔だった!?」
相変わらずノックもなしに入ってきては両手で顔を覆い、指の間からこちらを覗き見るのは毎度おなじみのドルト先生。
「貴様……ノックをしろと何度も……!!」
「ってそれどころじゃないんだよっ!! 大変なんだ!! 王都が……王都が、このままじゃ死の都になる!!」
「!?」
「死の──都──?」
人と人が行き交い賑わいを見せるあの都が?
一体、何で……。
「どういうことだ、説明しろ」
オズ様も気になったようで、ドルト先生に迫るように尋ねる。
「実は、ここで流行っていた季節性の流行り病が、王都でもはやり始めたんだ。これは毎年のことだけれど、今年のこれは質が悪い。ここで流行ったのと同じように今年は広まりも早くて、免疫もほぼ効かない。王都はこの町の比じゃないほどに人口も多いし人の行き交いが盛んだから、余計に人から人へと移ってしまって大流行しているらしいんだ。王都の治療院に人が押しかけてパンク寸前だし、僕も手伝いに行かないといけない。オズ、良いかな?」
治療院がパンク状態……。
となれば普段から医師にかかっている人の診察すらできない状態になって、被害が別の部分でも出てくる。
近隣の町から応援を、となるのは当然なのだろうけれど……。
「……そうだな。仕方あるまい」
この町にはドルト先生しかお医者さんはいない。
ドルト先生がいない間、かかりつけで通っている人たちは?
信頼するお医者さんが長期にわたっていないということに不安を覚えるだろう。
彼に代わりはない……!!
「──あのっ!!」
「セシリア?」
気が付けば、私は声を上げていた。
「私が行きます」
「セシリアちゃんが!?」
「はい。私なら、光魔法でなんとかできると思うんです」
この町の人達の怪我を治した時と同じように光魔法を使えば。
ここのところ魔力が安定しているし、量も増えている気がする。
今ならたくさんの魔力を使っても大丈夫だろう。
「だが王都で力を使えば、君のことが知られることに──」
「大丈夫です。私が行って、ちゃちゃっと終わらせた方が効率が良いですし、それに……この町には、ドルト先生が必要だから」
「っ……セシリアちゃん……」
「私が大好きなこの町の人達には、不安なく、元気でいてほしい。私、ちゃんと帰ってきますから。……オズ様さえ、よければ……」
オズ様が帰ってくるなというのならば話は別だけれど、彼が帰ってきても良いと言ってくれるなら、私はここに帰ってきたい。
ちらりとオズ様に視線を移すと、未だ眉間にしわを寄せたオズ様が「ぐっ」と唸った。
「君の居場所はここだ。が……一人で行っても帰ってくる保証はない。俺も行く」
「オズ様が?」
も、もしかして一人では迷子になるとか思われてる!?
子ども扱いされてるの私!?
「オーズ。言葉足らずは良くないよ。ちゃんと言ってあげないと。セシリアちゃんがあちらに取り込まれて帰ってこないんじゃないかと心配してるって」
「っドルト!!」
へ?
心配、してくれてるの?
私を?
遠慮がちにオズ様に視線を向けると、オズ様は頬を赤くして視線をそらし、口を開いた。
「聖女の力を見た良からぬ者に攫われる可能性もあるからな。……その……無事に君が帰ってこなければ困るし……。とにかく!! 俺も行く。ドルト、留守を頼んだぞ。セシリア、急いで支度をする。まる子とカンタロウに知らせてくれ」
「!! はいっ!!」
私はオズ様の気持ちに暖かさを感じながら、はっきりと返事をした。