来世に期待します〜出涸らし令嬢と呼ばれた私が悪い魔法使いに名を与えられ溺愛されるまで〜
「大丈夫か?」
「は、はい。オズ様が来てくださったので……」

 オズ様が止めてくれなかったらと思うとぞっとする。
 きっと私はそのまま引きずり出されて男爵家へ連行されていたことだろう。

「間に合ってよかった。まる子、カンタロウ、もう大丈夫だ。よく耐えたな。殺気をしまえ」
 そう言われて初めて、二匹が鋭い目つきで殺気を発していることに気づいた。

「危なく殺るところだったわ」
「本当だよ。僕ら、よく耐えたよね」

 おそらくオズ様が来なければ彼らが殺っていたんだろう。
 よかった。この屋敷が血に染まる前にオズ様が来てくれて。

「でも、聖女を称える会、って、何なんでしょうか?」
「あぁ、毎年王家主催で行われているパーティだ。まぁ、聖女と言われているローゼリア・フェブリールを褒め称え、崇める会、のようなものだな」

 毎年そんな奇怪なパーティが行われていたなんて……。
 よくパーティにはいってらしたから、そのうちの一つなんだろうけれど。
 言っては何だけれど、ものすごくどうでもいいパーティだ。

「俺も毎年強制参加させられるが、顔を出してすぐに帰ってる。が……今年は君もわざわざ呼ばれているということは、何かあるのかもしれないな」
「うっ……」

 そうよね。
 今まで呼ばれたためしはないし、普通に考えて何かあるわよね。
 得に王太子殿下や王都の人達の病を治した後だ。
 疑ったほうが良いのかもしれない。

「行かなきゃ、ですよね……。殿下のご命令ですし……」
「……あのクソ王太子……」
 オズ様、そういうことは心の声としてとどめておいてください。

「君は俺のパートナーとして参加しろ」
「へ?」

 オズ様のパートナー?
 私が?

「む、無理です!! 私なんぞが超絶美しいオズ様のパートナーだなんて、おこがましすぎる!! 絶対無理ですっ!!」

「そんな力いっぱいに拒否しなくても……」

「だ、だって……オズ様は完璧で。スマートな振る舞いができる高位貴族ですよ!? 私なんて、美しくもなければダンスだって踊ることができない、ただの出涸らし──」
「セシリア。自分を卑下するな。君は、君が思っている以上に美しい」

「~~~~~っ!?」

 な、何⁉
 何なの⁉

 最近のオズ様はなんか変だ。
 よく優しく笑いかけてくるし、よく歯の浮くような甘いセリフを繰り出してくるし、頭を撫でるのも人前だろうともはや気にすることなく撫でるようになった。

 町の皆から「仲が良いね、早くくっついちゃえばいいのに」なんてからかわれても、いつもなら顔を真っ赤にして否定するのに、最近は私を見て不敵に笑うのみだ。
 怖い。
 まさか甘いもの食べすぎて糖尿病じゃなくて甘い言葉を吐く病にでもなったんじゃ……?

「ごほんっ。とにかく、当日、君は俺のパートナーとして、俺の傍にいること。いいな?」
「は、はいっ!!」
 私の返事に満足げにうなずくオズ様。

「カンタロウ。セシリアのパーティ用のドレスや装飾を選んでくれ。あと、当日はヘアセットも頼む」
「まかせて!」!
「まる子。当日の御者は任せた。馬車を整えておいてくれ」
「わかったよ、オズ」

 オズ様がテキパキと二匹に指示を出していくのを私はただ茫然と見守る。
 すごい熱量だわ…….。
 私なんかのために、ありがたいことだ。

「セシリア」
「はい?」
「一週間。一週間で誰にも文句は言わせない令嬢にしてやる」
「え、あ、あの?」

「王都のアホどもに目にもの見せてくれる──!!」

 燃えている……!!
 オズ様が燃えているわ……!!

 こうしてオズ様による私のプロデュースがはじまった。 







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