来世に期待します〜出涸らし令嬢と呼ばれた私が悪い魔法使いに名を与えられ溺愛されるまで〜
「何とか形になってきましたわね」
「あ……ありがとう、ルーシア」
オズ様のプロデュース宣言から六日目。
いよいよ明日は聖女様を称える会とやらだ。
私はこの六日間、屋敷ではカンタロウによるパーティのドレスや装飾、ヘアセットの打ち合わせを。
そして孤児院の集会部屋では、元公爵令嬢のルーシアによるダンスの猛特訓をこなしてきた。
今まで貴族教育を満足に受けることのなかった私には詰め込み式の怒涛の一週間だったけれど、何とかなってよかった。
「それにしても、大丈夫ですの?」
「何が?」
「ご実家のことですわ。パーティで無理矢理連れて帰られたりしたら……」
「……確かに……」
その心配はぬぐえない。
何せここまで押しかけてきたくらいだ。
簡単にあきらめるとは思えない。
でも……。
「何とかなる、はず」
「えぇ……根拠のない何とかなるって、不安すぎるんですけれど……」
「だ、大丈夫!! だって、オズ様がずっとそばにいてくださるんだし」
オズ様が大丈夫だとおっしゃるなら、大丈夫だ。きっと。
「……信頼しているのですわね、公爵様のこと」
「えぇ。誰よりも」
オズ様のことを考えた瞬間、身体がポカポカし始めつい花を咲かせそうになって、私はあわてて首を左右に振って思考を霧散させる。
この感情駄々洩れになる力、どうにかならないものか。
ものすごく恥ずかしい。
「でも、お気をつけなさいね」
「え?」
「あなたのご実家だけではなく、ルヴィ王女のことも。きっとあの人も出てきますわ。そうしたら公爵様に近づくに決まっています。あなたもですが、公爵様も連れていかれないよう、しっかりとくくりつけていなさいな」
くくりつけてって……。
でも確かにオズ様のことが好きだというルヴィ王女だ。
オズ様がパートナーを連れてきただなんて、面白くはないはず。
どんな方なのかはわからないけれど、気を引き締めていかないと。
「オズ様は、私が守ってみせる……!!」
「いや、それは何か違うけれど……まぁいいですわ。いつも通り、仲睦まじくイチャイチャしていれば嫌でも思い知るでしょう」
いつも通り、イチャイチャ!?
「わ、私達、そんなこと──!!」
「してますわよ。特に公爵様は最近セシリアに向ける目が柔らかくて、とっても愛おしそうにしてらっしゃいますもの」
確かにここのところずっと甘いような気はしているけど……。
何だろう。
過保護が増した、っていうか……。
まさか、ペット認定でもされたのかしら、私。
「ぺ……ペットとして、オズ様にしっかりと仕えなければ……」
今の私は忠犬とは程遠い。
迷惑をかけっぱなしだし……。
もっともっと、役立つペットにならなければ……!!
「……微妙にわかってないですわね……。まぁ、頑張りなさいな。だけど一つだけ約束して。二人そろって、このトレンシスに帰ってきてくださいましね。公爵様のいないトレンシスも、あなたのいないトレンシスも、誰も望んではいませんから」
「ルーシア……うん、ありがとう」
この町の一員として思ってもらえるようで、心が温かくなる。
私もこの町が大好きだ。
できることなら、ずっとここにいたいくらいに。
本来の私の目的すら忘れそうになるほど、ここを愛している。
だから……帰って来たい。必ず、この町に。
「さ、レッスン後のおやつにしましょう。今日はシスターがパイを焼いてくれたのです。もちろん、セシリアの分も」
「本当ですか!! 嬉しいです!!」
私たちはオズ様が迎えに来るまで、シスター特製のパイをいただきながら、二人で談笑するのだった。
「あ……ありがとう、ルーシア」
オズ様のプロデュース宣言から六日目。
いよいよ明日は聖女様を称える会とやらだ。
私はこの六日間、屋敷ではカンタロウによるパーティのドレスや装飾、ヘアセットの打ち合わせを。
そして孤児院の集会部屋では、元公爵令嬢のルーシアによるダンスの猛特訓をこなしてきた。
今まで貴族教育を満足に受けることのなかった私には詰め込み式の怒涛の一週間だったけれど、何とかなってよかった。
「それにしても、大丈夫ですの?」
「何が?」
「ご実家のことですわ。パーティで無理矢理連れて帰られたりしたら……」
「……確かに……」
その心配はぬぐえない。
何せここまで押しかけてきたくらいだ。
簡単にあきらめるとは思えない。
でも……。
「何とかなる、はず」
「えぇ……根拠のない何とかなるって、不安すぎるんですけれど……」
「だ、大丈夫!! だって、オズ様がずっとそばにいてくださるんだし」
オズ様が大丈夫だとおっしゃるなら、大丈夫だ。きっと。
「……信頼しているのですわね、公爵様のこと」
「えぇ。誰よりも」
オズ様のことを考えた瞬間、身体がポカポカし始めつい花を咲かせそうになって、私はあわてて首を左右に振って思考を霧散させる。
この感情駄々洩れになる力、どうにかならないものか。
ものすごく恥ずかしい。
「でも、お気をつけなさいね」
「え?」
「あなたのご実家だけではなく、ルヴィ王女のことも。きっとあの人も出てきますわ。そうしたら公爵様に近づくに決まっています。あなたもですが、公爵様も連れていかれないよう、しっかりとくくりつけていなさいな」
くくりつけてって……。
でも確かにオズ様のことが好きだというルヴィ王女だ。
オズ様がパートナーを連れてきただなんて、面白くはないはず。
どんな方なのかはわからないけれど、気を引き締めていかないと。
「オズ様は、私が守ってみせる……!!」
「いや、それは何か違うけれど……まぁいいですわ。いつも通り、仲睦まじくイチャイチャしていれば嫌でも思い知るでしょう」
いつも通り、イチャイチャ!?
「わ、私達、そんなこと──!!」
「してますわよ。特に公爵様は最近セシリアに向ける目が柔らかくて、とっても愛おしそうにしてらっしゃいますもの」
確かにここのところずっと甘いような気はしているけど……。
何だろう。
過保護が増した、っていうか……。
まさか、ペット認定でもされたのかしら、私。
「ぺ……ペットとして、オズ様にしっかりと仕えなければ……」
今の私は忠犬とは程遠い。
迷惑をかけっぱなしだし……。
もっともっと、役立つペットにならなければ……!!
「……微妙にわかってないですわね……。まぁ、頑張りなさいな。だけど一つだけ約束して。二人そろって、このトレンシスに帰ってきてくださいましね。公爵様のいないトレンシスも、あなたのいないトレンシスも、誰も望んではいませんから」
「ルーシア……うん、ありがとう」
この町の一員として思ってもらえるようで、心が温かくなる。
私もこの町が大好きだ。
できることなら、ずっとここにいたいくらいに。
本来の私の目的すら忘れそうになるほど、ここを愛している。
だから……帰って来たい。必ず、この町に。
「さ、レッスン後のおやつにしましょう。今日はシスターがパイを焼いてくれたのです。もちろん、セシリアの分も」
「本当ですか!! 嬉しいです!!」
私たちはオズ様が迎えに来るまで、シスター特製のパイをいただきながら、二人で談笑するのだった。