来世に期待します〜出涸らし令嬢と呼ばれた私が悪い魔法使いに名を与えられ溺愛されるまで〜
「すごく綺麗よセシリア……!! さすが私ね!!」
「うん、とっても素敵だよ、セシリア」
人型になったカンタロウとまる子が目をキラキラとさせて私を見る。
いよいよ聖女様を称える会当日。
私は朝からカンタロウによって磨き上げられ、支度をしてもらい、貴族令嬢らしい姿になった。
「ぁ、ありがとう、二匹とも。カンタロウのセンスのおかげだわ」
オズ様と私の瞳の色である赤と黒がメインカラーとなったドレス。
頭にはルビーがふんだんに使われた金の髪飾り。
いつもよりしっかりめにお化粧をしてもらって、鏡の中の自分がどこか別の人間のようにも思える。
「ほらオズあんたも惚けてないで、何か言いなさい」
「……」
さっきからただ一直線に私を見つめながら微動だにしないオズ様も、正装に身を包んでいていつもの美しさが増し増しになっている。
黒を基調とした正装に、私たちの瞳の色と同じ、真っ赤なルビーのカフスボタン。
銀のイヤーカフがきらりと光って、私の髪の色のようでなんだかくすぐったい。
が……動かない。
まるで美しいお人形のように、微動だにしていない。
何かおかしかったのかしら?
それとも気に入らなかった?
と、とりあえずオズ様……息してる!?
「あ、あの、オズ様? その……変、でしょうか?」
あまりにも反応が無さ過ぎて不安になってきた私がオズ様に声をかけると、オズ様ははっと息をのんでから、ようやく私と焦点が合う。
「あ、え、いや。……すごく、良い、と、思う。……似合ってる。セシリア」
言いながら耳まで赤くして再び視線を彷徨わせるオズ様に、私まで頬が熱くなる。
互いに顔を赤くして俯く私たちを見て、まる子とカンタロウがにんまりと笑った。
「その調子で向こうでもイチャラブしてなさい」
「い!?」
「そうそう。誰も間に入るスキなんてないくらいイチャイチャしてたら、きっと大丈夫だよ」
「なっ!?」
ルーシアといい、何で皆私たちが常にイチャイチャしてるみたいな認識なの!?
まぁでもたしかに、そんなイチャイチャしてたら誰も間に入りたくない……というか、むしろ視界にすら入れづらいわよね。
案外いい作戦かもしれないけど……恥ずか死ぬ!!
私はそういう来世への逝き方は望んでないんだけど!?
だけど……。オズ様がルヴィ王女に連れていかれるのは……何か嫌だ。
なら──やるしかない!!
「……オズ様」
「何だ」
「やりましょう」
「……は?」
「題して──イチャラブ大作戦です!!」
「はぁっ!?」
実家や王家に絡まれないようにするには、もうこれしかない。
背に腹は代えられないわ……!!
オズ様を守るためにも……!!
私、ちゃんとオズ様とイチャラブして見せる……!!
がっちりとオズ様の腕に自分のそれを絡ませると、オズ様の身体がビクンと跳ねた。
「せ、セシリア!?」
「行きましょう!! 行って、できるだけイチャラブというものをして、敵に絡まれないようにするんです!! 無事に二人そろってトレンシスに戻る為にも……私たちは、イチャラブするしかないんです!!」
「え。いや、ちょ、セシリア? 落ち着い──」
「いざ!! 王城へ!!」
「人の話を聞いてくれ……」
こうして私たちは、まる子の引く馬車に乗り、王都へと旅立った。